異質な人間は世の中のビタミンのようなもの〈日めくり橋本治〉
「世の中というものは色んな人間の集まっているところで、世の中というところは、“異質な人間のための役どころ”も色々に用意してくれているところなのである。学校というところは、たまさかに『成績』などというものが大きな比重を占めているだけのところで、結局は、世の中に必要な人材を育てるところなのである。世の中には色々な人間がいるのだから、学校の中に色々な人間がいたっていいのである。いいどころか、いなければ困るのである。異質な人間は世の中のビタミンのようなもので、それが欠乏するとさまざまの病気症状を起こすのである。だから、そうならないためにも、学校というところは、将来のビタミン学生を育成しなければならないのである。物事の筋道はいたって簡単なのであるが、『世の中』というものを所有している現実というところは、困ったことに、時々このいたって簡単な筋道が分からなくなるところなのである。だからそのためにも、人間というものは、自分の外に向かって『バカ』とか『アホ』とか『マヌケ』とか『ボケェ』とか言う罵りの表現を持ち合わせているのである」──橋本治『人工島戦記』