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エドガー・ドガ / メトロポリタン美術館
日本人にとって“会社”は最大の宗教〈日めくり橋本治〉
「会社が嫌いな若者は、実はとっても会社が好きだ。なぜかというと、彼等は会社社会に適合する人間になるような教育だけを受けているからだ。会社社会と教育機関が無意識の内に結託して、会社社会にだけ適合するような人間を作り出していると言ってもいいだろう。日本人にとって“会社”は最大の宗教で、教育は最大の洗脳だといってもいい。そして、そういう“洗脳”を受けた人間達にとって不幸なことは、現実の会社というものが、あんまりそういう人間の内実を問題にしてくれないということだ。会社にしか適合しないような教育を受けた人間を、会社というところはあんまり歓迎しない。
景気のいい時は『なんでもいいから採用しろ!』で、景気が悪くなったら、『没個性の人間はいらない』と言う。当然のことながら、利潤追求機関であるところの会社は、有能な人間を求めている。そして、会社の言う『有能な人間』とは、会社にしか適合しないような教育をはねのけて、そこで“有能な個”を作り上げた人間のことだ。そして、当然のことながら、この“有能”は、会社という調和社会の秩序を壊さないようなものでもある。ということになると、これはとってもむずかしい。つまり、『会社の方針に反さない程度に、会社社会に対して反抗的な人間』ということにしかならないからだ。」
──橋本治『宗教なんかこわくない!』