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グスタフ・クリムト / メトロポリタン美術館
全員が王様になればいい〈日めくり橋本治〉
「俺、信者とか取り巻きとか、全部嫌い。だって、やなんだもん。俺、別に神になりたいわけでも、教祖になりたいわけでもなくって、結局僕に教義があるんだとしたら、一切の教祖を否定するという、ただそれだけが教義だもん。
だってさ、これから先何があるのかっつったら、全員が王様になればいいんじゃないって、それだけなんだよね。全員が中産階級になるのなんてやだ。そんなビンボーなところでストップするのやだ。全員が王様になればいい。全員が王様になって、ビンボーな王様もいるし、金持ちの王様もいるしって、そういう風に色々いた方が面白いって思うもん。王様なんてそもそも金持ちなんだから、『ビンボーも面白いね』って言える王様だっていい筈なんだから、ビンボーな王様もいて、金持ちの王様もいて、男の王様もいて、女の王様もいて、若い王様もいて、年とった王様もいてって、人の数だけみんな王様だったらそれでいいじゃない。そんで、王様っていうのは、とりあえずしっかりしてなくちゃいけないってことだけは課せられた職業なんだから、みんなしっかりすればいいじゃない。ね?」
──橋本治『ぼくたちの近代史』