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自立を果たした人間は、他人を支配することができない
「自立した人間にとって、愛すること─即ちそれは、自分が他を愛すると同時に他も自らを愛するという事態が成立することだが─が出来るのは、相手も同じく自立を果たした人間の場合のみである。自立した人間にとって、いまだ自立を達成していない人間に“愛”という形で手を差し延べるのは、百害あって一利ない。それは、その影響力の強さゆえに、愛ではなくして、往々にして支配へと成り下がるからである。
自立を果たした人間というものはその自立性故に─1人の人間が自立するということは他の支配から脱却するということであり、支配からの脱却ということは、支配される状態から脱するのではなく、“支配”という概念から自由でありえることでなければならない─他人を支配することができない。」
『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ 前篇』