結婚という「決断」
梅が咲き始めて、着る服が一段軽くなったら、気分はもう春。いそいそと取り出して読み始めたのは、『春宵小論集』。橋本治四季四部作を季節ごとに読むプロジェクト第3弾の始まりです。
本書冒頭は、一年にわたり雑誌に連載されていた連作エッセイ「A SONGBOOK FOR HOLLY GOLIGHTLY」。Moon RiverやTennessee Waltzなどの歌詞とその翻訳、曲にまつわるエッセイが12曲分。『恋の花詞集』の前に読むのにもピッタリだとも思ったのでした(今読んでいる『完本チャンバラ時代劇講座』のあとは『恋の〜』を読む予定)。
人生に関するおよそ全てのことについて書いたとも言える橋本治なので、結婚について書かれた文章はいくつもあります。タイトルがそのものズバリの小説『結婚』もある。橋本治の最新情報に常にキャッチアップするため、「橋本治」でネット検索をするのが私の日課でもあるのですが、何が嫌いかと言って「橋本治 結婚」という検索予測が目に入ることだし、実際に目にしたことはないけど「橋本治 結婚」で調べる人の何割かの人を私は絶対に嫌いだと思う。だから橋本治が『結婚』というタイトルの本を書いたことに対して嬉しい気持ちがずっとある。
結婚はこの先の生活のあり方の選択である。そうであるならば性別が前提になくてもいい。この文章が書かれたのは1993年、早くこれが常識になればいいと思います。
『春宵』を読みながら想起したのは短編集『花物語』。
他人から目に見えてわかりやすくなくても、自分の感覚でもいいから、自分の胸のなかの幸福に気づいてつかまえておくこと。どんなに些細でも、それがその後の人生で大切な支えになる。だから、「若い読者にこそ美しい物語を読んでほしい」。『花物語』は4月から3月の一年を書いた短編集で、その中には夏も冬もあるはずなんだけど、なぜか春のイメージがあります。『春宵』を読みたくなるような季節には『花物語』も合う、春に読むのがいいな。