一体きみは、なんなんだろう?〈日めくり橋本治〉
きみは、人を斥けているつもりで、実は人を求めていた。
きみは、なんでも分っているつもりで、実はなんにも分っていなかった。
きみは、他人を愛しているつもりで、ちっとも他人を愛してなんかはいなかった。
きみは、何かを考えていながら、実は何を考えているのか、ちっともわかってはいなかった。
きみは、他人を目の前にしていながら、実は他人が何を考えているのか、ちっとも分ろうとはしなかった。
きみは実は、そんなことなんか、なんにも分ってはいなかった。
きみは、何一つ分らないから、自分のことなんか、なんにもわからなかった。
きみは、自分のことが何にも分らなかったから、自分が何をしたいのか、ちっとも分らなかった。
きみは、自分が何をしたいのかわからなかったから、実はなんにも出来なかった。
なんにも出来ないから、きみは他人のことを分ることも出来なかった。
きみが他人のことを分らないでいるのも、実は当たり前のことなんだ。きみは、自分のことなんか、何一つ分っていやしないから。
一体きみは、なんなんだろう?
若い人に向けて、自分の足で人生を歩くことを後押しするような本、『シンデレラボーイ シンデレラガール』からの言葉です。
厳しい言葉が続きますが、自分のことをちゃんと見つめる時期は人生のどこかで必要で、自分を受け入れることができることもその後なので、「一体きみは、なんなんだろう?」と問いかけ、最後に「大丈夫」って言ってくれるこの本は、実はとてもあたたかい。
“マジョリティ”に属している限り自分のことを考えなくて済んでしまうのが日本という社会です。