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#カワイクイキタイ23「昨日より今日より明日」
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「人生を今日よりもよくしていこう」
かわいそうに。有線から垂れ流しで消費されていたはずの音楽は今はじめて私の耳に届いた。他人事のように歌うことで、人生なんてなにもわかっていないような声で歌うことで、痛みや悲しみに寄り添わないことで、誰かを救う時もあるんだ。
でも、君が泣くなら僕も泣く。君が死ぬなら僕も死ぬ。君が無くなるなら僕もきっと無くなってしまうし、君が叫ぶなら僕も叫ぶ。ひとりぼっちになんてしない。守れない約束ばかりでもこれは約束だ。
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みんな、自分だけは一生生きてると思ってる。そんなことない。生きてると必ず死ぬし、生きていられる時間は長くない。誰といて、何をしたいか。そう思うと、駆け引きなんて時間の無駄でしかない。
今だ。
今言うんだ。こんなに愛してる。今するんだ。今できること。だいじに取っておいたって、秘めておいたって、死んでしまったら役に立たない。思いは届けなければ意味がない。どれだけ重くても、不細工でも、いいんだ。だってそうなんだから。
悪意や嘘じゃなかったらなんだっていいの。
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何者にもなりたくないよ。
なにもかにもに名前をつけたがりすぎる。この日々、あなたとの関係、置かれている立場、果たすべき役目、何もかもに名前をつけないと気が済まない。それも大概は、本人以外の他人が。安心できないんだ。みんなと同じじゃないと。
一枚一枚は軽くても、そう何枚も貼られると重くて動けない。
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もうこれ以上、自分の名前以外のなにとも呼ばれたくない。何者にもなりたくない。笑っている理由、泣いている理由、怒っている理由、その全てが私や、私とあなただけのものであればいい。それで充分。誰にも分かってたまるか。
なんと呼ばれても構わない。でも本当は、なんとも呼ばないで。
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めんどくさいと他人から言われてしまう、そんな人がすきだ。
テキトーにできなくて、誰かや何かのことでいつも傷付いて、いつも心を踊らせているか沈ませている。そんなめんどくさくてかわいそうな、やさしいあなたが、たまらなくすきだ。
最近知ったんだけどね、何も考えたくない何も感じたくない人は、思っているよりたくさんいるんだって。満員電車にも、馬鹿高い税金にも、阪神タイガースの優勝にも、何にも思わない人はたくさんいる。
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申し訳なさそうにしていたあの人は今恋人とNetflixを見ている。忙しそうにしているあの人は普段は意外と寝ている。同じ人なのに、知りたいことじゃなかったら裏切られた気になって、そんなのは勝手だよね。
四六時中、誰かや何かのことなんか、じつは誰も考えてないんだって。
なーんだ、そうなの。そうなんだ。知らなかった。そっか。さみしいな。かなしいな。
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空や海を見て、見ているのか見られているのか考える。見上げている時、見下ろしている。届けた時、受け取っている。外から見ているようで、内側だったりする。宇宙は知ってる。人間如きがわかることなんかなにも信じない方がいい。
確かなことは少ない。覚えていられることも。今いる場所から自分の目で見ている景色。お尻の痛みや、ベタつく暑さ、自分の感じたことだけ。そしてその全てがいつか終わり、100年後には誰もいない。
どれだけ終わって欲しいと思っても、どれだけ続いてくれと願っても、止まるか落ちるまで転がり続ける。
そう思ったら、明日のことをあなたと話したくなった。
明日というのは、未来という意味で、翌日という意味ではなくて、そんなことも説明しないとわからない人もたくさんいるってことに笑ってしまう。
あなたの涙はどんな味。
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ひとくちメモ
自分に何一つ満足したことがない。理想と現実の乖離にいつも苦しんでいる。今もそうで、きっと一生そう。
でも反面、私には二匹のかわいい猫がいて、五体満足で、両親・姉家族・妹家族みんな健康で家族仲もよく、愛する友人もたくさんいて、やるべきことややりたいことやらなければいけないことで日々が忙しなく転がっている。幸福であるはず。なのに、どうしてなんでしょうね。
クセで「どうせ死ぬしいっか」と思っているところがあります。
自死はしません、自分で死ぬ奴嫌いなんで。そういう意味ではなく、生き物はいつか死に、生きている時間は通り過ぎるもので、責任なんかないと考えています。どうせ居なくなるくせに何か残す必要もない。後世からしたら邪魔でしょ。
なんかやりたい時、恐怖や羞恥で二の足を踏みそうになったら「どうせ死ぬしいっか」と思ってます。私はただの人間で、何ができるようになってもすごくなんてならない。自分も相手もどうせ100年後には居ない。嫌われても怒られても死なない。悲しいや苦しいで人は死ねない。愛してるは言わないと伝わらない。
やりたいこととか、行きたい場所とか、会いたい人とか、言いたいこと。全部、人を傷つけたり誰かへの悪意じゃない限り、今しないとこわい。明日死ぬかもしれないから。
駆け引きは苦手。人を試すようで。そんな時間があるなら心を削って向き合いたい。人間の寿命の範疇を超えた偉大な話をされてもピンとこない。自分のそんなとこは嫌いじゃないです。
あなたと私のことをなんて呼ぶ?
じゃあ「楽園」と呼ぼう。そんな物語を今書いてる。
撮影日:2023年7月16日
撮影場所:江ノ島
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