高校生の日本語ライティング(=書くこと)における「接続詞」の使用方略①
高校で国語教師をしています。
高校生の書く文章を読んで、いつも気になっていることがあります。
それは、「接続詞」の使い方です。
「あと」「なので」「ですが」など、話し言葉をそのまま書いてしまうのです。
今回は、大学院のレポートで考察した内容をここに発表してみたいと思います。(著作権は放棄しておりません)
高校生にとってライティング(=書くこと)能力は重要
文章力は現代では必須の能力であり、その重要性は増している。2022年度より実施された新学習指導要領の国語科において、新教科「現代の国語」ではその授業時数の半分以上を「書くこと」に求めている。
高校生にとっても、近年の大学入試の多様化により、小論文や自己推薦文など何らかの文章作成を要求する大学が増えているため、進路を決定する重要スキルにもなりつつある。
しかし、文章力を高めるための方策がはっきりとしないため、入試の直前に慌てて教師に添削を求めてくる生徒は多い。その際には、教師が生徒と話し合いながら、生徒の書きたいことを引き出し、文章として整理するマンツーマンのコーチング的指導が求められ、非常に時間がかかる。よって、「書くこと」の指導も教師の個別スキルを必要とする難しい指導となってしまう。
指導者にとってもライティング(=書くこと)の指導は難しい
「書くこと」指導の困難性は国語科の教員のみならず、実社会においても広く認識されるものであろう。実際、筆者が勤務校で用いている「現代の国語」の指導書は、従来の読解分野の指導に割かれるページ数が400ページ近くあり、その中には板書例や指導案も含まれているのに対して、時数の半分以上を割かれた「書くこと」に対しての指導書ページはわずかに96ページであり、参考プリント例がその大部を占める。このことは、「書くこと」の指導は一斉指導に不向きな活動であり、教科書会社をもってしても対応しきれない困難性を示している。
指導者はライティング(=書くこと)をどう教えているか
この困難きわまりない「書くこと」の指導を学校教育の現場では、「型」を教えることによって対応している。
高校生の文章作成においては、将来、小論文を書くことを見据え、「意見文」を書かせることが多い。テーマを与え、そのテーマの概略と自分の立場を示し、自分がその立場をとる根拠について例をあげながら示し、反対意見を想定しながらそれに反駁を加え、まとめる、という「型」を教え込むのである。
そして、提出させた生徒の文章の評価としては、「表現」「構成」「内容」の3点を置き、その中にさらに細分化された評価項目を置くことが多い。
高校生の「書くこと」指導において、最も指導がしやすいのは「表現」に関する指導である。漢字間違い、文体の統一、口語体を使わない、など、一斉指導で行える項目がほとんどである。
次に「内容」については、授業内でテーマについて討論したり、他の生徒と話し合ったりすれば、ある程度の考えを表現することができる。
最も評価も指導も困難なのは、「構成」である。序論、本論、結論、という段落の作り方を教え込めば、その「型」にはめて文章内容を構成することはできる。
しかし、文と文をどう接続して論を展開していくかは生徒の表現したい内容や強調したい部分によって変わり、また、それをどうつなげていけば効果的に読み手に伝わるのかを検討することは生徒本人も指導者にも難しい問題である。
文と文を接続するには、もちろん「接続詞」を使用することになるが、それは、後続文へのモダリティについても考えていく必要がある複雑な認知を必要とする。
「接続詞」をどう使用するかが「構成」力の重要ポイント
接続詞をどう使用するかは、「構成」の評価に大きくかかわるだけでなく、「表現」の評価にもかかわる問題である。
高校で文章表現をさせた後は、教師による評価を行うのだが、たとえば、文頭に「あと」「なので」等の口語の接続詞を使用している場合は減点となるし、接続詞は基本的にひらがなで書くというルールがあり、「何故」「従って」等も減点となる[1]。「構成」「表現」の双方の評価にかかわる接続詞の使用について考察することは高校生の文章指導においても重要である。
そこで、生徒の使う接続詞の中でも誤用がよく見られる文頭使用の「あと」「なので」「ですが」を用いて、なぜ生徒はその接続の仕方を選ぶのか、そして、どのように指導していけばよいのかを考えてみたい。
[1] 2014『ピアで学ぶ大学生の日本語表現・第2版』(ひつじ書房 p.89)