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悪貨に駆逐される仕事──グレシャムの法則と『イシューから始めよ』が示す警鐘

💰 グレシャムの法則とは?

グレシャムの法則とは、16世紀のイギリスの財政家トーマス・グレシャムによって提唱された経済法則で、「悪貨が良貨を駆逐する」という現象を指します。具体的には、同じ額面の貨幣でも価値の異なるものが流通している場合、人々は価値の高い貨幣を手元に残し、価値の低い貨幣を市場で使用する傾向がある、というものです。

この法則は貨幣の話にとどまらず、現代の組織運営や仕事の進め方にも応用可能です。例えば、質の低い業務や情報が組織内で蔓延すると、本来価値のある仕事が埋もれ、本当に重要な意思決定が阻害されることがあります。

📖 マーチ&サイモンの論説

経営学者ハーバート・サイモンとジェームズ・マーチの研究によると、組織においてもグレシャムの法則が働くことが指摘されています。すなわち、日々のルーチンワークや短期的な成果が求められるタスクが優先されることで、本来時間をかけるべき戦略的な思考や創造的な業務が後回しにされるという現象です。これにより、組織全体が目の前の業務に追われる「短期志向」へと傾いてしまうリスクがあるのです。

📖 『イシューから始めよ』の概要

一方、安宅和人氏の著書『イシューから始めよ』では、仕事の質を決定づける重要な概念として「イシュー」の明確化が強調されています。イシューとは、解くべき本質的な課題であり、これを正しく設定しない限り、どれだけ努力を重ねても価値ある成果にはつながらないと説かれています。

著書の中で強調されるのは、「解くべき課題の見極め」と「効果的な思考プロセス」の重要性です。多くの人は膨大な作業に追われるあまり、本来注力すべきイシューを見失い、価値の低い仕事に時間を費やしてしまうという問題を抱えています。

🛤️ 「犬の道」とは?

本書では「犬の道」という表現が用いられ、これは価値の低い仕事に膨大な時間をかけ、努力はしているが成果には結びつかない状態を指します。多くの人が、やるべき仕事を見極められないまま、量でカバーしようとすることでこの「犬の道」に陥ります。この状況を避けるためには、仕事を始める前に「本当に解くべき課題(イシュー)」を見極めることが不可欠です。

🔗 共通点──本質を見極める力

グレシャムの法則と『イシューから始めよ』には、次のような共通点が見られます。

  1. 「低品質なものが高品質なものを駆逐する」

    • グレシャムの法則では、悪貨が良貨を駆逐する。

    • 『イシューから始めよ』では、無価値な仕事が価値ある仕事を圧迫する。

  2. 「何に注力すべきかを見極めることが重要」

    • 目先の業務に流されず、長期的に価値のある仕事に集中する。

    • 仕事の本質を捉え、重要なイシューに集中することが成果につながる。

  3. 「環境が適切でないと、本当に重要なものが機能しなくなる」

    • 組織の仕組みが適切でなければ、価値ある仕事に注力できない。

    • 仕事の仕組み次第で、本当に重要な課題に取り組む時間が失われる。

💡 示唆──無駄な仕事に埋もれないために

この2つの概念から得られる示唆として、以下の点が挙げられます。

  1. 「本当に価値のある仕事」を見極める意識を持つ

    • 日々の業務で「この作業は本当に成果につながるか?」を問い続ける。

    • 価値の低い業務に時間を奪われないよう、取捨選択の基準を持つ。

  2. 「悪貨に駆逐されない仕組み」を作る

    • 価値の高い業務を優先し、それが適切に評価される環境を整える。

    • ルーチンワークや無意味な会議に流されない仕組みを構築する。

  3. 「仕事の流通構造」を見直す

    • 組織やチームの中で、価値ある仕事が埋もれないようにする。

    • 情報の優先順位を適切に設定し、重要な意思決定を促進する。

✍️ まとめ

グレシャムの法則と『イシューから始めよ』に共通するのは、「本質的に価値のあるものが適切に機能する環境を整える必要がある」という視点です。日々の業務においても、低価値な業務に振り回されることなく、本当に解決すべきイシューを見極めることが、成果を最大化する鍵となります。

「悪貨に駆逐されないように、良貨をどう守るか」。仕事においても、この視点を持つことが重要ではないでしょうか?


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