ハイフレックス型授業は誰のため?
すでにいろいろなところで議論されていることではありますが
あらためてここに今思うことをまとめたいと思います。
コロナ禍で、学生が教室に集まって授業を受ける「対面授業」の実施が難しくなり、ビデオチャットアプリなどを使用したオンラインで行われるライブ授業への切替が各地で行われるようになりました。
ハイフレックス型授業とは?
「同じ内容の授業を、対面とオンラインで同時に行う授業のこと」
つまり教室で行われている授業をオンラインでも配信して、教室に来ることができない学生も受講できるスタイルです。
ハイフレックス型授業が行われる理由は?
教室に行くことができない何らかの理由があるから。
健康上の不安を抱える学生、入国制限によって来日できない留学生が主にその対象となります。
あるいは、教室に入る人数を制限するために、クラスを半分に分けて、半分は対面参加、半分はオンライン参加とする場合もあるようです。
ハイフレックス型授業の定義を確認した上でタイトルの質問に戻ります。
ハイフレックス型授業は誰のために行われるものでしょうか?
学生のためでしょうか。教師のためでしょうか。
学生の中に、ハイフレックス型授業を受けたい!という学生がいるでしょうか。
対面授業がいい、オンライン授業がいいという学生はそれぞれ一定数いるのではないかと思います。
ハイフレックス型授業は、このような相反する2つの需要に答えようとした結果、教育機関が出した答えであり、学生が望む形でもなければ、教師が望む形でもないというのが私の意見です。
そもそも本当に「同じ内容の授業」を対面とオンラインで同時に実施できるのであれば、すべてオンラインでいいと思いませんか?
対面ならではの何らかのメリットを期待して、対面で集まっているにも関わらずオンラインと同じ授業になるのであれば、オンラインでいいですよね。
その逆も然り。
オンラインならではのメリットを期待しているのに、対面で実施されている授業の中継を「見る」ことになるのであれば、リアルタイムで受ける必要はないですよね。
教師にとっても同じです。
どう考えても、二重の負荷がかかります。対面で授業しながら、配信設備を整え、ネットにつなぎ、オンライン配信の先にいる学生の様子にも目を配る必要があります。大事な情報の連絡は結局、LMSなどで公平にする必要があるでしょうね。
対面で受けたい学生もいる、対面で授業したい先生もいる。
オンラインで受けたい学生もいる、オンラインで授業したい先生もいる。
そのすべての需要に答え、問題を「解決」したかのように見せるのがハイフレックス型授業であると言わざるを得ないと思います。
本当は何の解決にもなっていないのに。。。
簡単に解決する方法が実は一つありますが、
これを選ばない理由は単純に人件費が前年度の倍になり、人の確保も難しいからでしょう。
その答えとは、「すべての授業を対面クラスと、オンラインクラスの2つ開講するということです」
たとえば、総合英語Ⅰという授業があったとしたら、総合英語ⅠAは対面クラスで教室で行い、総合英語ⅠBはオンラインクラスとしてビデオチャット上で行う。2人の先生を雇うか、1人で違う時間に両方担当する。学生はAを受けてもBを受けても同じように単位認定される。
ここで具体例を出します。
私が今学生として受けている授業のスタイルは4つあります。
①対面授業での講義スタイル
教師がほぼ90分間話し続けるスタイルです。教師はときどき学生に質問を投げかけ回答するという場面も少しあります。
②対面授業での演習スタイル
参加学生の中から発表者が発表し、その発表に対して質問やコメントを言いたい人が質問やコメントを言うスタイルです。クラスの人数も10人程度です。
③オンライン授業での講義スタイル
教師がひたすら話続けるスタイルです。出席管理があり、講義資料もすべて画面共有で映し出されるので、それを見る必要があります。
④オンライン授業での演習スタイル
事前に課題論文が指定され、担当制でその論文に関する問いを考えてきて、授業内では主に、その問いについてのグループディスカッションとシェアリングが行われます。
①〜④の授業がハイフレックス型授業になったとして、果たして対面の授業を受けている学生もオンラインの授業を受けている学生も満足いくものになるでしょうか。
実は、①や③のようなスタイルであれば、ハイフレックス型授業にしてもそんなに影響はありません。教師が一方的に話すスタイルだからです。
②についてもそんなに影響がないかもしれません。誰かが話し、話し終わったら誰かが答える、というオンラインにも移行しやすいターンテイキングで授業が進んでいくからです。たとえそこにオンライン参加の学生がいたとしても、現場にいるだれかがそのデバイス設置のみをきちんとすれば一応成り立つでしょう。(この環境整備が実は負担増なわけですが。。)
④がもっともハイフレックス型授業になったときに影響を受けやすい授業だと言えます。グループディスカッションを軸に授業が組まれており、教師による説明の時間はほとんどありません。このグループディスカッションを対面参加者とオンライン参加者とにやってもらうには、設備だけではなく、不公平さが生じないように配慮する必要が出てきます。
教育機関が①や③のような一方的に話す授業スタイルを望んでいるなら、ハイフレックス型授業も可能でしょう。
でも、そんな授業を続けていると、いい授業の動画がいろんなところに散らばっている時代になりましたから、あっという間にその教育機関の存在意義まで危ぶまれてしまうと思います。
ハイフレックス型授業がコロナ禍の教育の一つの答えで本当にいいですか?
もしよければ、投げ銭いただけると、今後の励みになります。
(有料部分に記事はありません)
ここから先は
¥ 100
よろしければサポート、お願いします。