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短編『何も気にならなくなる薬』その314

[ビーチサンダル、チアガール、ハサミ]

彼は万年ビーチサンダルだ。
正直なところあまり綺麗な形とは言えない。
今や人の家に土足で上がり込む人はそういないが、裸足で上がり込む人間はまだいる。
何が綺麗かの線引きは難しいが、集団の中で一人だけ違うということはやはり他人の目を引き、また嫌悪感を抱かせる。

そしてまた彼は周囲の目線を遮るように、ひたすらゲームに夢中であった。
いや、夢中というのは夢というだけあって何か未来があるようにも思えるかもしれないが、どうも何かの役に立つとは思えない。
実物すらまともに見たことのないチアガールがハサミを片手にゾンビと戦うゲームが現実世界の知識につながるだろうか?
いや、もしかしたらゾンビを題材にした物語を書くのであればそれはいい資料になるのかもしれない。
しかし彼はただただゲームに熱中している。
意味のあることは多いが、意味のないことはどこまで突き詰めても意味がない。ちなみにチアガールは左利き。
ハサミもまた左利き用になっている。
「そんなことやって意味があるの?」
「その質問には意味があるの?」
彼はまたゲームに中へ。


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魚亭ペン太(そのうち公開)
美味しいご飯を食べます。