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魚亭ペン太「洒落布団」

誰がどれだけ洒落を言えるのかで賭け事をしようってんで、洒落を言ったら一分ずつ置いて、誰も言わなくなったら総取りという話になりまして……

「関西の猫は、よく兄貴分に頼るって知ってるか」

「どうして?」

「よく鳴くだろう。にぃやん、にぃやんって」

「それならおめぇ、犬はどんなに数えても一匹だ」

「どうして?」

「ワン、ワン、ワン」

「そんなら、カラスが馬鹿に鳴きすぎて声枯らすってんで、それで困ったカラスがアメリカには名医がいると聞いて飛んでいくが、その医者いわく「これはなかなかに苦労します」とのこと」

「どうせ医者に行くなら5月がいいぞ。いつ行っても名医だ」

「なるほどうまいね。うまいといえばうな重だ。うな重の松竹梅の意味は知ってるか?時間は待つし、値段は高ぇけど、味はうめぇってことよ」

「ふぅん、飲食店なら……あぁ、そうだ。寿司屋の亭主が品切れで店閉めて、布団に入ったら、酔った客からまだネタあるじゃねぇかって絡まれたそうだ。それで包丁振り回しての大喧嘩になった。あとから聞いたら酢も切らしてたから、どうりでシャリになんねぇわけだ」

「おうおう、くいもんといえば市場だ。それならしってるか、千葉には妖怪を売ってる市場があるそうだ」

「そりゃ八日市場の聞き間違いだ」

「なんだお前たち面白いことやってんな。それなら大爆笑間違いなしのとっておきを披露しよう。布団が吹っ飛んだ」

「おいおい、バカが来たよ。夏だってのに寒いや。掛け布団でも吹っ飛んでこないかね」

「掛け布団を寝ながら蹴飛ばすといえば、おめぇのとこの奥さんだ」

「よくもまぁ、そんなこと知ってんな」

と各々が洒落を言うたびに掛け金がベットされていきます……布団だけに

とかく昔は飲む打つ買うが男の嗜みでして、くだらないことで賭け事をしていましたが、なかには飲めない打てない買う金ないなんて人もいまして……

「ちょっと、帰ってくるのが遅すぎやしないかい」

「過ぎちゃいないよ、まだ八合目」

「何の話だい」

「そんなこといわないでさ……ヒック、ちょうじょうを見させてくれよ」

「うちの娘ならそこで寝てるでしょう」

「そら、ウチの娘は長女かもしれないけれどね、そうじゃない。俺はね、気持ちよく登りきりたいの、この山を、ほら、あと二合で頂上」

「天気が悪いからそろそろ下山して白状しなよ。どこで何飲んだの」

「そりゃおめぇ、ご利益のある成田山で甘酒飲んだ」

……

美味しいご飯を食べます。