短編『何も気にならなくなる薬』その291
単語ガチャで出た単語をジャーナリングしつつ話を考えてみる。
「報告書」
私の経歴上、報告書というものは書いたことがない。
それらしいものをあげるとすれば、
飲食店だと仕入れの伝票がそれにあたるだろうか。
とにかく報告をするような事がないような生活だった。
出来事を書き起こすという点ではココが報告書代わりだろうか?
〜
「これ、悪いけど報告書、書き直してもらえる?」
「駄目ですか」
「いや、これでも構わないけど上に見せる以上これはマズイでしょ」
「そうですかね、画期的な報告書だと思いましたけど」
「いや、報告書は報告書でいいのよ、絵を描いて表現する必要ないから」
「でも強みを活かせって」
「たしかにキミは美大出身だけれども、A3にでかでかと書かれた報告書は初めてだよ」
「見やすいと思ったんですが」
「見やすい、もちろん見やすい。だけど、なんだろう、別の理由で見にくくなっているんだよこれは、ほら、持ちにくいでしょこれ」
「サイズ変えればいいですか」
「あぁ、ええよん」
「小規模」
大型ショッピングモールは便利だ。あれこれと探す楽しみがある。
そこいくと小規模ならぬ小売のお店というのはなかなかに大変なのだと思う。
商店街や観光地なら自然と足を運んでもらえるかもしれないが、周りに何もないとなるとそれだけを目当てに目指してもらわないといけない。
何処か有名な場所へ向う途中にあるとか、そこでしか買えない特別さ、オリジナリティが必要不可欠だ。
しかし秘境の〇〇と聞くと惹かれてしまうのが人間の不思議だ。
〜
「こんなところにあるんですか、美人の湯が」
「あぁ、あるそうだよ」
「しかし、どんな美人がいるか楽しみですね」
「あぁ、美人の湯ってくらいだ、さぞ美人の裸が覗けるぞ」
「いやぁ、緊張してきたな、あ、もしかしてあれじゃないですか」
「よくやった、どれどれ、うわ、これはひどい、湯けむりで何も見えない」
「あなた方、何をしているんですか」
「えっ、いや、私達は別に覗きとかじゃないですよ」
「あっ、あなた達もあれですか?美人になるために美人の湯に浸かりに来た」
「えっ?美人になる?」
「えぇ、なんでも美人に成れる湯だっていうものですから、男性も恥ずかしがることはないですよ。美しくなろうという気持ちに性別はありませんから」
「えぇ、そうですね、あっ、そういえば忘れ物をした。とょっと失礼します」
「おい、どうして諦めるんだよ」
「だって湯に浸かって美人になろうってくらいだぞ、どんなのが出てくるか分からない」