急がば回れと急いで回れは全くの別物。「苦労は買ってでもしろ」の再定義
ゲームが趣味で暇なときによくプレイするのだが、前までは評論家気取りで最近のゲームは面白くない、だとかうだうだ言っていた。なんで楽しめないのかを考えたときに攻略動画や配信を見ていて前評判や攻略方法を知ったうえでプレイしていたので、それが原因なのではないかと思うようになった。
試しに攻略動画、配信、攻略サイト等の前情報を一切頭の中に入れずにDQ11をプレイしてみたのだが、これがめちゃくちゃ面白くて久々にRPGで楽しめた。昔はRPGなども熱中していたのだが最近はもっぱらfpsなどのジャンルのゲームをしていたのだけれど何の因果があってRPGが楽しめなくなり、fpsなど対人ゲームが好きになっていったのか考えてみた。
基本的にRPGはレベリングをして編成をしてパーティーを自分なりに組む。そして強敵の対策、それに合わせたパーティーの組み方で敵を討ち、攻略完了。この基本形は前情報を入れることで容易に済ませることができる。言ってしまえば簡単に最高効率で強くなれる。それに比べて対人ゲームは攻略を見たからといって自分ができないといけないので、多少の苦労をすることになる。この自助努力こそがゲームの面白さなのだと思う。
高名なゲームプロデューサーがゲームの面白さとは苦痛からの解放だというが、まさにその通りで最近のゲームが対人戦を基本に流行っているのもうなずける。昔はそこまで容易に情報が手に入らなかったから、対人ゲームも、RPGも長く続けられたと思う。自分の中でも長く続けれられたゲームは大抵めちゃくちゃ強いという自負がある。自分の世代だとスプラトゥーンの1番最初期からスプラトゥーン2が出るまでやっていた。その頃はランクマもS+までで最後の方はタッグマッチでウデマエを上げたプレイヤーがs+帯にも入ってきてS帯S+帯は混沌極まりなかった。それでも圧倒的に強かったし、掲示板で言われるほど苦労もしなかった。
自分がプレイし始めたころは解説動画などはなく上手い人の動画を見て参考にしたり、とにかくプレイすることの自助努力で上手くなっていた。しかもその自助努力をしたおかげで後期になってくると解説動画が出回りだすのだけれどこの解説動画を見たところでもう知っていることだったから見る必要もなかった。でも解説動画を見て強くなってきた層は経験値が圧倒的に少ないから、そこまで強くなかった。これは解説の真意、なぜそれがこの場面で強いのか、なぜそれをしないといけないのか、なぜそれをするべきなのかという本質を簡単に強くなってきた層は理解できない。これが経験値であり、自助努力の価値だと思うし、自助努力にはこうした側面がある。
これは余談だが、コンテンツの消化スピードの速さにも、この前情報と自助努力の影響があると思う。特にゲーム業界はその傾向が顕著で、配信者などの配信活動、実況者などの解説動画、ググれば攻略まとめサイト。上げるときりがない。簡単に強くなれて、自助努力がまったくないからRPGが流行らず、対人ゲームが流行る。こういう構造だと、配信者やゲーム実況者という職業の業の深さは計り知れない。配信することで、企業側もPRになるし適当に遊んで適当にやめる。でも金は落としてくれるファン層がいる。変な均衡を保った業界だと思う。
話は変わって今日の本題。通じるところが日本全体にもあると思う。よくおじさん達は苦労は買ってでもしろ、とは言うがこれが老害なのは間違いない。ただ自助努力の側面として簡単に強くなってきた者たちよりも経験値であったり、なぜそうすればいいのか、なぜそうすべきなのかに対しての本質の理解が、苦労せず簡単に強くなってきた者よりも圧倒的に高い。だからこそ、ことわざでは、急がば回れというのだと思うが、日本で言われているような苦労を買ってでもしろというのは急いで回れと言われているようなものだ。苦労というものは自らするもので他人に勧められてするようなものでもない。根底には楽しみたいから、強くなりたいから、うまくなりたいからするものであり主体性がないとただ急いで回っているだけだ。
この言葉は字面通りに受け取れば主体性をもって苦労しろと言っていると聞こえるいい言葉なのだが、こういうことを言う連中のニュアンスはとりあえず苦労しろ、と苦労が目的になって全く主体性がない。上っ面だけのイイ言葉が独り歩きを始めて老害らしく苦労を美化する。だからこそ今回の主題のように、急がば回れと急いで回れは全くの別物であると思う。