あるカーデザイナーのクルマ選び057
私も還暦を迎え、仕事内容も変わり、人生の次のステップに向け大きく進路変更も考え始めました。
車も次の生き方に合わせて変わっていくのもいいかと考えるようになりました。
そして、いつもの様に、クルマ選びの「あーでもない、こーでもない」が始まりました。
最初は、あのドイツ車の安心感に戻ってみようか、ベンツとアウディはまだ乗ったことがないし、BMWのステーションワゴンも使い勝手と走る楽しさが両立できるかも、
家も引越して、駐車スペースに制約もないのですが、もう大きい車は必要ないからゴルフのスポーツバージョン辺りにするか、でも、外車はハイオクだし、燃費もハイブリッドには敵わないし、
いっそ、もう一度ヴェゼルという選択肢もあるか、もうすぐヴェゼルも新しいのが発表されるようだし、今のを買うか、新しいのを買うか、延々と続く「あーでもない、こーでもない」
定期点検で立ち寄った、いつもお世話になっているのホンダディーラーさんに相談してみました。
「この車、75万で下取りますよ!」
「え?!でもひょう害車で10万キロ超えてますし、あちこち傷だらけですよ?」
「確かに、それらがなかったら100万で引取りますよ」
「えーー!」
中古車市場って、本当に人気で相場が左右されてしまうのだとあらためて思いました。
正直、気持ちが動きました。
今のヴェゼルをもう一度、新車か高年式のModulo仕様の中古かで購入し、そして新しいヴェゼルのModuloが発売されたらそれに乗り継ぐのもありか、と。
かなり具体的に気持ちが動き始めました。
そして、調べているうちに、Modulo Xの中古車を見つけ、試乗させてもらいに出かけました。
試乗で走り出した瞬間に違いがわかりました。
アメリカ時代、アコードに今でいうModuloサスを組んでもらい、走り出した時と同じ感じでした。
これは私にピッタリかもしれない。
走行性能、時にハンドリングレスポンスや高速の安定性は確実に成熟しているのは予想がつきました。
安全装備も初期の頃に比べ充実してるし、気持ちは決まりかけていました。
しかし
細かい装備を見てみると、「あれっ?今のに付いてて、新しいのにはないものもある」細かい小さなことではあるのですが、意外と重宝しているリバースギアに入れた時に、左のドアミラーが下向きになる装備もそうでした。
おそらく内部メカを移植すれば、簡単に付けることは可能とは思いましたが、きっと他にも、そういう箇所はあるものだろうなと思いました。
でも、それなのに300万近いお金を払っていいのか?
こんなこと書くと、開発していた側にいた人間として誤解されるかも知れないですが、金額が駄目なのではなく、どれだけ私個人に納得感があるかだと思うのです。
ニューモデルへの乗り換え、違う車種への乗り換えならば、こんな気持ちにはならなかったと思うのですが、年式は新しくなったとは言え、同モデルの同等仕様のモデルへの乗り換えで安全性能や走行性能の進化はあるのに、装備で今より下がる機能があるのは納得がいかなくなりました。
何度も書きますが、同モデルへの乗り換え故のことだと思います。車の基本性能進化は素晴らしいのです。
そして、最終的に買い替えを断念しました。
そうやって、今のヴェゼルの元に戻ってみると酷使され、それでもみんなの満足のために働いてきた今の車が、とても愛おしく思えたのでした。
還暦すぎた自分の姿と、ちょっと重なって見えたのかもしれません。
そして、今の車をリフレッシュすることを決心したのでした!
つづく