古今集巻第十九 雑躰誹諧歌 1059番
題しらず
よみ人しらず
よひのまに出でて入りぬる三日月のわれて物思ふころにもあるかな
宵の間に出でて入りぬる三日月の割れて物思う頃にもあるかな
夕方に出て来てすぐに沈んでしまう三日月の形のように、心が割れて物思いにふける頃であるものだ
「宵(よい、よひ)」は、夕方の日が沈んだ頃です。三日月は、それまでも空に出ていたけれども見つけにくいです。暗くなってようやく西の空にはっきりと見えるようになり、そしてすぐに沈みます。
上の句は「割れて」に掛かる序詞ですが、物思う「頃」は、「近頃はいつも」と「宵のこの時間」の両方の意味なのでしょう。
三日月の姿を「割れた形」ととらえて、私の心も割れていると言っています。「物を思ふ」のは、多くの場合、恋の相手のことです。上手くいかない恋に、自分の心は壊れてしまったようだ、ということと思います。
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