見出し画像

古今集巻第十八 雑歌下 967番

時なりける人の、にはかに時なくなりてなげくを見て、みづからのなげきもなくよろこびもなきことを思ひてよめる
清原深養父
ひかりなき谷には春もよそなればさきてとくちる物思ひもなし

時なりける人の、俄に時失くなりて嘆くを見て、自らの嘆きも無く喜びも無きことを思ひて詠める
清原深養父
光無き谷には春も余所なれば咲きて疾く散る物思ひも無し

時を得て栄える人が、突然に時流が悪くなって嘆くのを見て、自らは嘆きも無く喜びも無いことを思って詠んだ歌
清原深養父
光が届かない谷には、春に花が咲く喜びも余所の事なので、咲いてすぐに散る悩みもないものだ

暗い谷間には、物憂い春は来ない、ずっと暗いままだという感じを、人に例えています。華やかな時もあるが浮き沈みのある人に対して、自身は派手な思いはしないが、落ち込むようなこともない、と言う歌です。
他人を批判しているようでもあり、少し卑屈になっているようでもあります。

#古今集 , #雑歌下 , #清原深養父 , #光無き谷 , #春 , #物思ひ

いいなと思ったら応援しよう!

ちのみゆき
応援してやろうということで、お気持ちをいただければ嬉しいです。もっと勉強したり、調べたりする糧にしたいと思います。