古今集巻第十八 雑歌下 964番
つかさとけて侍りける時よめる
平さだふん
うき世には門させりとも見えなくになどかわが身のいでがてにする
司解けて侍りける時詠める
平貞文
憂き世には門鎖せりとも見えなくに、などか我が身の出でがてにする
役職が解けていた時に詠んだ歌
平貞文
世間に対しては門を閉ざしているとも見えないはずなのに、なぜか我が身は外の世間に出にくくなる
「司解けて(つかさとけて)」は、役職が解任になっている意味。
「うき世」は「憂き世」です。辛く悲しいこの世の中、うまく行かない男女の仲のこと。「浮き世」と書くようになるのはもっと後世(江戸時代か)で、意味的には同じですが、「どうせなら楽しもう」という気持ちが含まれるようになります。
「門鎖せり(かどさせり)」は、門を閉ざすこと。
「などか」は、なぜか。
「出でがてにす」は、出難く思う、出られないでいる、ことです。
「~がてにす」は、~しがたく感じる、しにくい、やりにくい、の意味。
仕事が無くなってしまい、外に出る意味が無いのか、人と顔を合わせたくないと言う意味なのか、それとも、出家したり隠遁しようと思うがそれも出来ないでいる、というようなことかと、思います。
「平貞文」は、「さだふみ、さだふん」などと読むようです。
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