古今集巻第十八 雑歌下 992番
女ともだちと物がたりして、別れてのちにつかはしける
みちのく
あかざりし袖のなかにやいりにけむわがたましひのなき心地する
女友達と物語りして、別れて後に遣はしける
陸奥
飽かざりし袖の中にや入りにけむ我が魂の無き心地する
女友達と語りあって、別れた後で送った歌
陸奥
まだ満足していないです、あなたの袖の中に入ったままなのでしょうか、私の魂はここにない気がします
「飽く(あく)」は、もう十分と思うぐらい満足すること。「飽かざりし」は、まだ満足していないこと。
「袖」は、袂(たもと)もほぼ同じなので、「袂を分かつ」と言うように別れの象徴でもあり、相手の袖の中に魂が入ったのは、まだ語りあいたいという意味なのでしょう。
陸奥(みちのく)は、橘葛直の娘。宮中での名前です。
女同士で語りあって、まだまだ話し足りない、という歌です。宮中の立派な男性の話や、大勢の女官のうわさ話などをしたのでしょう。恋のうわさ話もあるでしょうけれど、あの方がお詠みになった歌はここが素敵だとか、あの人は歌が下手だ、わたしならこう詠むとか、そんな話題もあるのだと思います。
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