古今集巻第十八 雑歌下 997番
貞観御時、万葉集はいつばかりつくれるぞと問はせ給ひければ、よみてたてまつりける
文屋ありすゑ
神無月時雨ふりおけるならのはの名におふ宮のふるごとぞこれ
貞観御時(ぢゃうぐわんのおほんとき)、万葉集はいつばかり作れるぞと問はせ給ひければ、詠みて奉りける
文屋有季(ぶんやのありすゑ)
神無月(かんなづき)時雨(しぐれ)降りおける楢の葉の名に負ふ宮の古言(ふるごと)ぞこれ
貞観の清和天皇の御時に、万葉集はいつ頃作られたかとご下問になったので、詠んで奉った歌
文屋有季
神無月十月の時雨が降り下りる楢の葉と名前が同じ奈良の都の時に作られた古い和歌が、これです
「楢」と「奈良」は掛詞。上の二句は、楢に掛かる序詞です。
「奈良の宮」は、平城京を指します。古今集の真名序に「万葉集は平城天皇の時に作られた」と読める記述があり、そのことを指すという考えもあるようです。しかし「奈良の宮」は、人を指すのだとすれば「東宮」になってしまうので無理があります。「奈良に宮殿があった時」と考えるのが無難です。
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