岩波少年文庫を全部読む。(107)中国の怪異譚には「空から落ちてきた女の子」的なものが多すぎないか。 蒲松齢『聊斎志異』抄
「三会本」から31篇を選ぶ
蒲松齢(1640-1715)の生前から、幻想短篇散文集『聊斎志異』の写本は複数出回っていたようです。
自序(岩波少年文庫版未収録)は1679年のものですが、その後にも複数の短篇が書き継がれました。
最初の刊本は著者の死後半世紀以上を経た1766年。445篇を収録するこの版は「青柯亭刻本」と呼ばれます。
張友鶴輯校の「會校會注會評本」(「三会本」)が1962年に刊行されました。これは附録を含め503篇を収録し、現代の決定版のひとつと見なされています。
『聊斎志異』(立間祥介編訳、岩波少年文庫)は、この三会本から31篇を選んで訳したベスト版です。
「道士と梨の木」
百姓が道士(道教の宗教者)に売りものの梨を恵んでくれと言われ、追い払おうとします。近隣の店の売り子が見かねてひとつ買い与えると、道士はみなさんに梨をあげようと言って梨を食べ、残った種を土に埋め、熱湯をかけます。
するといきなり梨の木が生えて実がなり、ギャラリーに配ります。百姓が気づくと売りものの梨が全部なくなっており、車の梶棒の1本が切り口も生々しく消え去っていました。
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