岩波少年文庫を全部読む。(106)子どもには成長が、大人には変化がある。大人こそ変わろう。 ヨハンナ・シュピリ『ハイジ』
ヨハンナ・シュピリ『ハイジ』(上田真而子訳、岩波少年文庫、全2分冊)は、『ハイジの修業と遍歴の時代』(1880)とその続篇『ハイジは学んだことを役立てる』(1881)の2篇が、ひとつながりの長篇小説1篇として読まれるようになったものです。
マイエンフェルトでの修業時代
ハイジ(ハイディ)はアーデルハイトの愛称。5歳の彼女が、保護者である叔母デーテに連れられて、グラウビュンデン州マイエンフェルトの高台にある世捨て人の祖父・アルムじいさんの家に引き取られるところから、物語が始まります。
ハイジは0歳で父を、1歳で母を亡くしました。その後、叔母のデーテと暮らしたのです。デーテ叔母さんは、この翻訳ではかなりニュートラルに訳されていますが、訳のしかたによっては、ちょっと無神経で自己中心的な人物という解釈も可能な人物です。
彼女はアルムじいさんに姪を託したあと、ドイツの大都市フランクフルトでメイドとして働くことになります。
アルムじいさんは、隠者として小屋暮らしを続けています。孫娘を引き取ることには、最初はあまり乗り気ではありませんでした。それでも、ハイジを気にかけてくれています。
若かったころ、この祖父は賭博に明け暮れ、家の遺産を蕩尽してしまいました。その後ナポリで傭兵として働きます。どうやら祖父は傭兵時代に人を殺めてしまい、隊から脱走する羽目に陥ったらしいという噂です。
(児童文学の主要登場人物というより、リーアム・ニーソン演じる「過去を持つ男」という感じ)
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