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岩波少年文庫を全部読む。(131)小学生版『折々のうた』 大岡信編『星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句』

大岡まこと『星の林に月の舟 声で楽しむ和歌・俳句』 (岩波少年文庫、2005)は、岩波少年文庫レーベルのオリジナル日本短詩アンソロジーです。

『万葉集』(8世紀後半)から寺山修司の歌集『空には本』(1958)までの歌集・句集・詩集から選ばれた全194作。〈和歌・俳句〉とありますが、31音の和歌・近代短歌や俳諧・近代俳句だけでなく、他の形式の短詩も収録されています。

秋の七草にも和歌がある

たとえば『万葉集』第1538歌は8世紀前半に活躍した山上憶良旋頭歌せどうか(5-7-7-5-7-7)です。

萩の花 尾花おばな葛花くずばな なでしこの花
女郎花おみなえし また藤袴 朝貌あさがおの花

山上憶良、『万葉集』第1538歌、
大岡信編『星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句』
所収、岩波少年文庫、30頁。

編者の鑑賞文によると、〈秋の七草を五七七・五七七の旋頭歌形式でよんでいます〉(30頁)とのことで、あれ? これってお正月にお粥にする「芹なずな御形ごぎょう繁縷はこべら仏の座すずな蘿蔔すずしろ春の七草」の秋ヴァージョンじゃないか。
ちなみにこの旋頭歌では〈朝貌〉は桔梗をさすという説が濃厚です。

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