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岩波少年文庫を全部読む。(96)9人のサイボーグ戦士(?)、王さまと戦う 君島久子編訳『けものたちのないしょ話 中国民話選』

君島きみしま久子『けものたちのないしょ話 中国民話選』(岩波少年文庫)には27篇の民話が収録されています。

これおととし2020年の、岩波少年文庫創刊70周年記念復刊第2弾で、特製カヴァーがついたんですよね。

画面では黄色に見えますが、植物モティーフは金色です。

少数民族の民話を優先

この27篇のうち、中華人民共和国の人口の95%を占めるとされる漢民族の民話はわずか3篇にとどまっています。

残り24篇の内訳は、
ミャオ族、チベット族が各3篇、
迴鶻ウイグル族、タイ族、景頗ジンポー族が各2篇、
普米プミ族、族、錫伯シボ族、トゥ族、ヤオ族、蒙古モンゴル族、ヌー族、哈薩克カザフ族、朝鮮族、ペー族、烏兹别克ウズベク族、布朗プーラン族が各1篇
となっています。

「九人のきょうだい」のすばらしさ

族の民話「九人のきょうだい」が、なによりすばらしい。

子どものいない妻が家の裏の池で泣いていると、この世のものならぬ白髪の老人が丸薬をくれます。それを飲むといきなり妊娠、そして一度に9人の赤ん坊を出産してしまうのです。

生まれたはいいが乳が出ないと嘆いていると、また老人が出てきて、この子たちはなにもせずとも勝手に育つから心配するなといって、子どもたちに名前をつけてくれました。

 その名前というのは、
 「ちからもち」
 「くいしんぼう」
 「はらいっぱい」
 「ぶってくれ」
 「ながすね」
 「さむがりや」
 「あつがりや」
 「切ってくれ」
 「みずくぐり」
というのでした。

君島久子訳「九人のきょうだい」
君島久子編訳『けものたちのないしょ話 中国民話選』所収、
岩波少年文庫、60-61頁

名は体をあらわす。9人のサイボーグ戦士のように、9人兄弟はそれぞれ違った超能力の持ち主となったのです。

サイボーグ戦士の見せ場

サイボーグ戦士と違って、9人は見た目がそっくりで区別できません。

以下、「ちからもち」が王宮の倒れた柱をひょいと立て直し、

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