岩波少年文庫を全部読む。(127)みごとな構成、だけど…… ミヒャエル・エンデ『モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語』
ミヒャエル・エンデの『モモ』(1973。大島かおり訳、岩波少年文庫)は「時間」を主題とした思想的ファンタジー文学です。
廃墟に住むホームレス少女の不思議な能力
舞台となるのはある都市。主人公の少女モモは、天然パーマの髪も目もまっ黒な少女。廃墟となった円形劇場に住んでいます。
ホームレスと言っていい存在ですが、ある才能を持っています。
モモと会話すると、だれもが言葉も心もリラックスして饒舌になり、さらには秀逸な着想が浮かんでくるのです。心に喜びが溢れ、隠していた悩みや自分でも気づかなかった発見が、自分で言葉になっていくのです。
これって、プラトン対話篇に出てくるソクラテスをさらに触媒的にしたもののように思えます。
口から出任せなことを言って糊口をしのぐ観光案内のジジは、モモとの付き合いが始まってから、人を楽しませる話をさらに自在に繰り出せるようになりました。
道路掃除夫のベッポは、言葉を発するまでの時間が異様にかかる人でしたが、それでもモモに心を開き、打ち明け話をすることができるのです。左官屋のニコラや居酒屋のニノも、モモの友だちです。
メン・イン・グレイ
ある日、この都市に〈灰色の男たち〉が現れる。〈時間貯蓄銀行〉のエージェントたちです。
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