岩波少年文庫を全部読む。(123)荒唐無稽なスパイアクション、そして夏休みは人類最高の発明品 アストリッド・リンドグレーン『名探偵カッレとスパイ団』
先週、先々週に引き続き、もう言い切っちゃいます。
アストリッド・リンドグレーン『名探偵カッレとスパイ団』(1953。尾崎義訳、岩波少年文庫)は、岩波少年文庫最強シリーズ(3部作)の完結篇です。
そしてこの3部作は、文学史上最高水準の「夏休み小説」に属しているのです。
ロウティーンの終わり?
殺されたグレーンじいさんとの一件から1年。さて、今年も夏休みに入り、小さな田舎町リルチョーピングでは、〈赤バラ軍〉と〈白バラ軍〉の戦いがきょうも続いています。
今回は、アンデス、カッレ、エーヴァ・ロッタの〈白バラ軍〉のライヴァルである〈赤バラ軍〉のシックステン、ベンカ、ユンテが、冒頭から出てきてるんですよ。
それでもやはり、夏休みのダラダラ感がきっちり書かれてて、じつにイイのですが、同時に「ロウティーンの終わり」が示唆されるのがまた切ない!
町の郊外にある城跡の下に、古い別荘がありました。
〈白バラ軍〉が通りかかると、5歳のラスムスと知り合います。
ちなみにこのラスムスは、同じ作者が3年後に書いた『さすらいの孤児ラスムス』(1956。尾崎義訳、岩波少年文庫)の主人公とは別キャラクターです。
ラスムスは夏のあいだ、父ラスムソン教授といっしょに、そこに住んでいるのです。
ラスムソン教授は、軽金属を防弾化する方法を発明した人でした。
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