岩波少年文庫を全部読む。(115) 100年前のシングルマザーと4姉弟 エリナー・エスティス『元気なモファットきょうだい』
『元気なモファットきょうだい』(1941。渡辺茂男訳、岩波少年文庫)は、米国の児童文学者エリナー・エスティスの、連作形式の長篇小説です。連作形式とは、プロット駆動型ではなく、挿話累積型ということですね。
発表されたのは太平洋戦争が始まる年ですが、作中時間は第1次世界大戦中のもよう。
借家を出ていくまでの日々
モファット家は、コネティカット州クランブリー(クランベリー)の母子家庭。作中で(子ども視点で)〈ママ〉と呼ばれる一家の母親は、ニューヨークに住んでいたことがあり、いまはこの田舎町で裁縫師をして4人の子どもを育てています。
きょうだいは上からシルビー(シルヴィー)、ジョーイ、ジェーン(ジェイン)、ルーファス。
本書では下のふたり、ジェイン(ジェイニー)10歳と末っ子ルーファス5歳が、実質上の主人公です。
モファット家が住む黄色い借家に、見知らぬ男が〈売り家〉の貼札を打ちつけるところが、物語の出発点。家主である医者のウィッティさんが、家を手放すことにしたのです。
父親が世を去って間もないころから数年間住んでいるこの家を出ていくなんて、ジェイニーには想像もつきません。
ママは子どもたちに言います。
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