岩波少年文庫を全部読む。(105)自作へのアンサーソング? カラッと気持ちいい冒険サスペンス アストリッド・リンドグレーン『さすらいの孤児ラスムス』
アストリッド・リンドグレーン『さすらいの孤児ラスムス』(1956。尾崎義訳、岩波少年文庫)は、孤児少年ものにクライムサスペンスを投入した少年小説です。
孤児院からはじまる物語
9歳のラスムスは「ヴェステルハーガ孤児の家」で育ちました。
彼はいつの日か、愛に溢れた里親の家に養子として迎えられるように願って、毎日を送っています。
養親候補が孤児院を訪れるときは、子どもたちはみな、洗濯してぱりっとアイロンを当てた服を着ていなければなりません。
でもラスムスはその日の朝、うっかり孤児院の院長に水をかけてしまうのです……。
孤児院からはじまる話といえばジーン・ウェブスターの『あしながおじさん』(1912。谷口由美子訳、岩波少年文庫)ですが、
そういえば『あしながおじさん』はリンドグレーンのブレイク作『長くつ下のピッピ』(1945。大塚勇三訳、岩波少年文庫)は『あしながおじさん』から生まれた作品なのでした。
養子を希望する人たちは結局、ブロンドの癖毛の女の子グレータを養子に迎えることにしました。
ラスムスは、なかよしで腕白仲間のグンナルに、自分が〈針毛〉(太くてごわごわのストレートヘアってこと?)であることをぼやいてしまうのでした。そして養子として受け容れられるのは、じっさいには女の子ばかりだったのです。
脱走と出逢い、そして遍歴
とうとうラスムスは、自力で「親」を探すことにします。金持ちで親切で、直毛の男の子を求めている親を。
あくる晩、ラスムスは孤児院から、ヒョーク先生のもとから脱走します。
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