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岩波少年文庫を全部読む。(72)「シンデレラ」+「千両蜜柑」、手塚治虫の絵で観たい。 サムイル・ヤコヴレヴィチ・マルシャーク『森は生きている』

岩波少年文庫には戯曲もある

岩波少年文庫には少数ながら戯曲が収録されています。
ソ連時代のロシアの文学者サムイル・ヤコヴレヴィチ・マルシャークの、スラヴ民話をもとにした童話劇『森は生きている』(1943。湯浅芳子訳)はその代表。1945年にスヴェルドロフスクで初演されたそうです。

これと並ぶもうひとつの戯曲は、メーテルランクメーテルリンク)の『青い鳥』(1908。末松氷海子訳)ですね。

原題は『12の月』

『森は生きている』は湯浅による訳題で、原題は『12の月』といいます。この劇には、1月から12月までの月(moonではなくmonthのほう)の精が登場するのです。

もととなった民話はスラヴ世界に幅広く存在しているらしく、各国のヴァージョンが紹介されています。

たとえば、スロヴァキア版の再話は『12のつきのおくりもの スロバキア民話』内田莉莎子再話、丸木俊画、福音館書店《こどものともセレクション》)。

ウィーン生まれのチェコの国民的小説家ポジェナ・ニェムツォヴァー(19820-1862)による再話は『十二の月たち』出久根育訳・画、偕成社《世界のお話傑作選》)。

その他じつに多くの絵本が存在します。

シンデレラ的継子いじめから愚君の暴政へ

これらの民話では、主人公の少女(マルシャーク版の湯浅訳では〈ままむすめ〉)は「灰かぶり」シンデレラ)と同様の継子であり、継母とその連れ子(継姉)に理不尽な要求を突きつけられて、途方にくれます。

たいていは雪深い12月に、その季節にはありえない春の植物を見つけてくるように言われるのです。
これは落語の「千両蜜柑」と同じミッションですね。

さてこのマルシャークの戯曲版では、このミッション・インポッシブルがたんなる継子いじめにおさまっていません。

継母が雪深い森に、春を告げる待雪草まつゆきそうを見つけてこいと娘を追い立てたのは、女王の歓心を得るためでした。
気まぐれで我儘な14歳の女王が、この季節に存在しない待雪草をどうしてもほしいと言い出し、

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