ルドルフ・シュタイナー
以前の記事でマダム・ブラバツキーを
中心とする、神智学についてご紹介
しましたが、神智学協会の重要人物の
ひとりで、後に協会と袂を分つ、
ルドルフ・シュタイナーにも言及が
必要でしょう。
シュタイナーは20代でゲーテの研究者
として世間の注目を浴びました。
その後、ドイツの神智学サークルにおいて
神智学徒たちの集まりで講演を行うように
なります。
1902年に神智学協会の正会員となり、
「神智学協会ドイツ支部」が設立されると、その事務総長(書記長)に選ばれました。
10年ほど活動した後、同協会を脱退し、
人智学(アントロポゾフィー)協会
を友人らと設立します。
シュタイナーは、ヨーロッパにおける
秘教、神秘主義の伝統のなかでも、
傑出した人物として評価されています。
しかし、単なる神秘主義者ではありません。
ゲーテの自然科学論の影響下で彼が
展開したのは、当時、様々な形で模索
されていた「総合知」のひとつであり、
その背景には「新プラトン主義」
があったのです。
そう、もともとは哲学者なのです。
彼の提唱したものは、一貫性のある
完璧に整えられた生活スタイルで、
オーラの色から台所の棚の色まで
細々とした決まり事に満ちていました。
彼が凡百の神秘思想家と違うのは、
教育(シュタイナー学校)、農業、医療
といったものに明るく、実践的なノウハウをいずれの分野でも持っていた部分です。
これは単なる秘教の研究に明け暮れる
神智学と大きく異なる点です。
また、神智学と同様に秘儀の公開と
霊性の開発を説いていますが、
よりキリスト教的、社会的性格が強いのも
特徴です。環境問題にも強い関心を
寄せていました。
彼が創始した「人智学」(アントロポ
ゾフィー)とは、
ギリシャ語で人間を意味する
anthroposと、叡智を意味する
sophiaを合わせた造語です。
シュタイナーは、人間の精神は物質の次元
から生成、発展して、高次の霊的世界に
達することができると考えていました。
神智学は神秘体験や幻視によって、
神の叡智を学ぶものですが、人智学は
認識の主体はあくまで人間なのだと
考えます。
即ち、人間は訓練によって透視能力や
霊能力を獲得することができ、
それによって超感覚的世界を認識し、
自我を高揚させ、浄化し得るとして
いるのです。
このように考えた時、シュタイナーが
神智学から離れて行ったのは、必然的
だったということができるでしょう。
神智学がニューエイジにオカルト、
秘教的知識を与えたのに対して、人智学は、(その名前こそ廃れましたが)より実践的、現実的な哲学を現代の我々に
与えてくれます。