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ぽれん十五と、アイドルと、俺と。


第一章 ぽれん by アンディーメンテ

俺の名はちんねん。さすらいのエージェントだ。
俺の人生はアンディーメンテで出来ている。

アンディーメンテとはインターネット上に存在するゲーム制作サークルで、ジスカルドという男がそのサークルでずっとゲームを作り続けている。

アンディーメンテ公式HP


windows98の時代から今に至るまで、グラフィック、音楽から内部のプログラムに至るまでの全てをワンマンでゲームを制作してはインターネットに公開し続けて、熱狂的なファンを生み出してきたヤバイヤツだ。
今までリリースしたゲームは裕に100を超えている。

引用:アンディーメンテ公式HPのゲーム掲載ページの一部。やり込み要素満載のノンフィールドRPG、探究心をくすぐられるシミュレーション、ドットの間の死線をくぐり抜けるシューティングなど様々なジャンルのゲームが入り乱れている。

そんなヤバイヤツことジスカルドが、年に1回、年末年始の時期に超ヤバイ大型ゲーム企画を開催し続けている。

オリジナルキャラクター投稿ゲーム『ぽれん』だ。
(正式名称:ポーンさんがやった果てのヘレン)

プレイヤー1人ひとりはオリジナルキャラクターの制作者となって画像や紹介文などを自作し、独自の戦闘システムに沿ったステータスを振り分け、専用サイトへ投稿する。
投稿されるキャラクターは、まさに「多様性」だ。
妖精の少女に荒野のガンマン、記憶を喪ったアンドロイドや光熱費に手を出すギャンブラーなど、様々なキャラが入り乱れる。
キャラクター画像は自作のイラストを使うプレイヤーが大多数だが、それ以外でもオリジナルであればOKとされている。
一緒に暮らしているペットやぬいぐるみの写真で参戦するプレイヤーもいる。中には自撮りの写真を「これ自分のオリジナルキャラクターです!」と言い張って参戦するプレイヤーまで出没している。
そうして集められたキャラクター達は、アンディーメンテ公式Youtubeチャンネルの動画に登場し熾烈な戦いを繰り広げていく。
例年何百人ものプレイヤーが参加し、灼熱のようなゲーム愛と創作愛が大旋風を巻き起こし、怒涛の年末年始を過ごしている。
かく言う俺も毎年欠かさずに二人のキャラクターをエントリーし、戦いに身を投じている。
一人は「肉弾の射手」。
自分の好きなキャラ属性を盛りに盛った、褐色・メカクレ・バルクアップ系女子だ。

引用:ぽれん11枚キャラクターページ
好きな格闘漫画の表紙イラストを参考にして肉体美の表現をがんばって描いた。

そして、もう一人のキャラクターは「エージェントちんねん」。
スマホで撮った自撮りの写真をオリジナルキャラクターと言い張って、ぽれんの世界で闘い続けている。

引用:ぽれん6 キャラクターページ
この回に実装された新ジョブ「精霊術師」になるべく、ペンライトを両手に限界まで持った姿を撮影した。

第二章 ライブハウスの灼熱と旋風

この国にはゴールデンウィークとかいう、カレンダー上で何連休になるかが半分運任せのシーズンがある。
今年もフードフェスが楽しみだとか、海浜公園のネモフィラが見頃だとか、春らしく陽気な話題で賑わいがちだ。
一方の俺は憂鬱な日々を過ごしている。ぽれんの開催時期でもなければ、スギとヒノキという植物に恨みつらみを覚えている。

去年のゴールデンウィークは特に大変だった。
恒例の花粉症に留まらず謎の頭痛にまで悩まされ、いくつかのクリニックを受診した末に人生初の「副鼻腔炎」と診断された。
それ以上に辛いことも重なった。
まぁ、「愛と呼んでいたモノに裏切られた」といった類いのモノだ。

自分は大した甲斐性も無く、薄情で器が小さく、偏屈した人間だと認識するに至り、どこか冷めた諦観の気持ちで人生の行く末を見据えていた。

そんな薄情な人間だからこそ辛い事を引きずる時期も短く、「何か新しい体験をしてみよう」と思って、ビル地下のライブハウスへ足を踏み入れた。
そのビルの地下にライブハウスがある事は何となく知っていて、上の階にあるホビーショップには何度もお世話になった。コンテストに参加して自作フィギュアを展示した事もあった。
そんな馴染みのあるビルだったからこそ、地下に続く階段を一歩踏み出せたのだろう。

受付の兄さんに「お目当てのグループはどこですか?」と聞かれ、「あっ、えっと特にありません…」と対応に困る返事を返し、辿り着いたステージは…
アイドルのライブイベントだった。そして、出会ってしまった。
灼熱のようにハートを焼き焦がすグループ、MAGMAZ/マグマズと。

旋風のようにネガティブを吹き飛ばすグループ、CYCLONISTA/サイクロニスタに。

この二つのグループが同じ事務所に所属していることには後から気づいたのだが、どちらもステージから放たれる爆発的なエネルギーと虜になってしまった。
…ここから俺の青春、アイドルオタク人生が始まった。

第三章 ちんねんミーム化計画

俺はMAGMAZとCYCLONISTAのライブに足繁く通うようになった。地元の何気なく通り過ぎた場所が次々と思い出の場所に塗り替えられていった。
そんな折、彼らと数年ぶりに交流するようになった。
霊臨とバッドボーイ杉本だ。
この二人とは大学時代に仲良くなったのだが、俺の一つ下の学年で入学したはずなのに、俺より一年先に卒業していった。アートと音楽の両方の才能に溢れるヤツらだ。

夏の終わりのある日、彼らからLINEが届いた。
「ちんねんさん、霊臨のMV撮影を手伝って欲しいんで、霊臨の住んでる浜松まで遊びに来ませんか?」
その二人に誘われるがまま浜松に行って、自然公園でMV撮影の手伝いをして、ついでに二人のポッドキャストの録音にも同席したりして、色々遊び回った。

引用:『Angel Allo ~恋の道標(ミチシルベ)~』MV
カメラ係として参加したMV。天使(バッドボーイ杉本)の肉体が何故か仕上がりまくっており、夕日に照らされた光景はさながら楽園(パライソ)だった。

旅先の高揚感の中、俺は彼らに向かってひとつリクエストした。
「今度は逆に、撮って欲しいものがあるんだけど…」
撮ってみたかったもの、それはMAGMAZの「cheat mode」と「UUU」の振り付けを踊る動画だった…
いわゆる「振りコピ」と呼ばれるものだ。
「cheat mode」は挑発的で攻撃的な、上辺だけのヤツらをブッ飛ばしてやろうという曲、一方の「UUU」は音と愛で世界を超えて、宇宙を駆け巡ろうというLOVE&PEACEな曲だ。
対照的な2曲だが、この振り付けは見るだけも楽しいのは勿論、振り付けを真似たら更に楽しくなるという気持ちを表現してみたかったし、自分なりのファン活動でもあった。

自分を被写体にしてネットに公開することも、特に抵抗を感じなかった。ぽれんに参戦し続けた経験がここで活きていて、サングラス一本あれば「ちんねん」というキャラクターで己を晒すことができた。

こんな心境で撮影した動画を元に、ループするGIFアニメ形式に編集した振りコピをXに投稿し始めたのだった…
かつてネットで流行った「猫ミーム」のように、自分という媒体を通じて認知度に貢献したいという願望を込めて、「ちんねんミーム化計画」というタイトルを付けてポストした。
この日にコツを掴んで以降、覚えた振り付けを定期的に撮ってはネットにアップする趣味を嗜むようになった。

ちんねん・ミーム化計画まとめ:MAGMAZ編|chingnen
ちんねん・ミーム化計画まとめ_CYCLONISTA編|chingnen

第四章 ぽれん十五

結成、【超美麗3D】

そんなこんなで迎えた11月、様々な予想を裏切りながら、ぽれん開幕の季節がやってきた…
そもそもの予想外がナンバリングだった。前々回が「10」、前回が「11」ときて今年のナンバリングが…「十五」と来た。
この素っ頓狂に見えるナンバリングには、明確な意味が込められていた。
ぽれんの世界に燦然と輝くレジェンドキャラクター、「十五夜」にちなんだナンバーだ。

引用:ぽれん15 キャラクターページ
「ぽれん8」「ぽれん9」で他の誰も思い付かないステータス割り振りを行い、名を馳せた。
その後、「ぽれん10」にて十五夜をモチーフにした技「Teacupmoon15」が実装されるに至った。

更に全プレイヤーを驚かせたのが、陣営についてだった。
ぽれんはAM(アンディーメンテ )陣営と、ST(ステッパーズ・ストップ)陣営との2陣営どちらかに属して相手陣営と戦うシステムだったのが、GY(十五夜)陣営という第三勢力が急遽実装された。

その他にも新ジョブ「魔剣士」の実装やAIキャラクターの参戦など新規要素が次々と追加され、その度に驚きや興奮を与えていったのだが、今年のぽれんは十五夜が台風の目となる「十五夜イヤー」だった。

そんな十五夜イヤーの中、俺は相変わらず「エージェントちんねん」を投稿した。
自撮りキャラが集うというコンセプトの、『超美麗3D』なんて名前のチームも企画し、メンバーを募集した。
正直なところ、こんなチームに誰が来るんだろうかという自虐ネタの心境でメンバーを募集したが、その予想は斜め上に裏切られ、頼もしく頭のネジの飛んだメンバーが集まった。

・肌も顔も晒し、仲間との夢小説を執筆しだすガチ既婚者「デコピナーの妻
・18万円フルオーダーメイドぬいぐるみ+フルアーマー本人「ぐるみソルサイ
・実写キャラクターリスペクトで実写参戦し、GB素材を配布しだした「ヤマネザマウンテン
そしてバッドボーイ杉本もとい「天使」。
自分を含めて5人、ぽれんは試合ごとに5vs5で戦うので、フルメンバーが集結した形となった。
こんな個性の塊のようなフルメンバーが集うとは思わず、嬉しさのあまり記念に「エージェントちんねん・アクリルフィギュア」も作成した。
良い年した男が自分の全身をプリクラ機で撮影した姿のアクリルフィギュア…
ちんねんという生き様だからこそ生まれた成果物だ。

pixiv BOOTHに出品した翌日、デコピナーの妻の人がアクリルフィギュアを注文してくれて、届いてからはXにアクリルフィギュアを掲げて撮った写真もたくさん投稿してくれた。

その写真の数々を見て、まるで俺自身がアイドルになったかのような気分を味わえたのだった…

メリークリスマス・ぽれん十五

『超美麗3D』は初戦でメンバーが別々の試合に出場せざるを得なくなるといったアクシデントも発生したが、両試合ともに勝利を収めた。そしてメンバー全員が合流し、第二回戦で激闘の末に敗退した。
もう一人のキャラクター「肉弾の射手」も『コミックPO』というチームで参戦したが、初戦で敗退。どういうわけか、『コミックPO』に至っては、オープニング動画で公開された「逆勝率ランキング」で逆一位(11.1%)と晒されたのちの敗戦だった。

ぽれん本編では程々に目立つ程度の活躍だったのだが、俺は並行して別の戦いにも臨んでいた…
それは、ぽれんの世界とアイドルの世界の間を反復横跳びして、二つの世界を繋げる戦いだった。
ぽれん関連のコミュニティでは、程々にMAGMAZやCYCLONISTAの事を話したり、Youtubeで聴ける楽曲を紹介したりしていた。

一方でMAGMAZやCYCLONISTAに対しては、自分なりに大きなアクションを起こした。
クリスマスライブの折、エージェントちんねんアクリルフィギュアを持ち込むという挑戦に挑んだ。
ライブ後の特典会で、アクリルフィギュアを手にした写真やチェキを撮ってもらうためだ。
繰り返すが、良い年をした男が自分の全身を撮影した姿のアクリルフィギュアである。
「嫌がる事をリクエストした」という理由で運営サイドに叱られるか、最悪の場合はその後の特典会でNGを喰らう覚悟で持ち込んだ。

しかし、返ってきた反応は真逆だった。
「私がコレ見て嫌がると思う?そんな訳ないやん!」
「ちんねんもアイドルじゃん!」
「これ欲しー!ママにも見せる!」

サンタクロースは子供達にプレゼントを届けている間、俺はと最高の思い出というプレゼントを受け取れたのだった…

ぽれん十五と、イヴ天と、俺と。

ぽれんの魅力は、キャラクター同士の試合を観戦する事だけに留まらない。
様々な遊び方が用意されており、自分に合った楽しみ方を模索するのも、ぽれんの醍醐味のひとつだ。
その楽しみ方のひとつが、ファンアート制作だ。
追加のイラストや動画などを制作して「#ぽれん応援絵」とか「#ぽれん動画内で紹介して」というタグを付けてXに投稿すると、試合のサムネイルや、試合前後のインターバルの時間に掲載してもらえる事がある。
俺はこちらの方面でも、二つの世界を繋げる挑戦を続けた。
まず制作したのが、アクリルフィギュアのPR画像だ。
アクリルフィギュアのPRと言いつつ「チェキも立てられる!」というこじつけのコピーを載せ、アイドルとのツーショットチェキを立てかけた写真を載せた。

誤:FACTORY 正:booth

チェキに写っているアイドルはCYCLONISTAの必殺イヴ天USR👼、通称「イヴ天」だ。
俺がぽれんの話題を特典会で喋ったり、Xで呟いたりしている様子から興味を持ち、ぽれんの本編動画を視聴してくれたのだ。
全宇宙で唯一と言っても良い、ぽれん本編動画視聴アイドルと言っても過言ではないだろう。
まさか、推しにぽれんの布教をすることになるとは思わなかった。
そして、この画像がぽれん本編動画に採用されることになるとは予想だにしていなかった…

旋風のエージェント feats. 夜のケモノ(short)

『ぽれん15 ・25日目(前編)』にて、まさかの採用となった。ちなみに、なぜか翌日の26日目(前編)にも採用された。編集ミスであっても嬉しいもんは嬉しい。

プレミア公開当時はぽれんDiscordサーバーに集まって同時視聴していたのだが、このシーンが流れた時は最高の瞬間だった…

そして、俺の挑戦は更に続いた。
今度は動画を作成した。ぽれんエンディングシーンのパロディ動画だ。
ぽれんは最終試合の後、イカした音楽に合わせてジスカルドが踊る姿がワイプのように映し出されるのも恒例となっていた。
俺はそのシーンをパロディして、エンディングと同じ音楽に合わせて踊る動画を撮影した。
振り付けは勿論、敬愛するアイドルの振りコピだ。
MAGMAZやCYCLONISTAの振り付けが中心だが、彼女たちの後輩グループZZZZZ/ズズズズズや、多くの人から惜しまれながら昨年末に解散となったrayray/レイレイの振り付けも取り入れ、無我夢中で踊り明かした。

引用:自分のYoutubeチャンネル
カラオケ店で3時間パックを予約し、うち2時間半をダンスタイムに費やした。

そしてこの動画は、この情熱は、ジスカルドの下に届いた。
このダンス動画を素材にした、偽エンディングパートがぽれん本編にも採用されたのだ。

引用:アンディーメンテYoutubeチャンネル
一緒に踊っているキャラクターの中に、我が【超美麗3D】を打ち破り、この日に散った【無法地帯B】の面々も並んでいる。勝敗の後に互いの健闘を讃える時間のように感じた。

そして偽エンディング採用から数日後、ぽれんの世界とアイドルの世界の反復横跳びは怒涛のクライマックスを迎えるのだった--。

▼2025年1月15日(水)
・19:00
 退勤のちライブハウスにIN
・20:20~20:45
 CYCLONISTAのライブで踊り回る
・20:50
 ぽれん公式X「最終日動画のプレミア公開、今晩21時!」
 の告知を知り、動揺を抑えつつライブハウスを一時退席
・21:00~21:50
 ぽれん十五 最終日動画
 プレミア公開をリアタイ視聴
・22:00
 ライブハウスに戻りイヴ天とツーショットチェキ

じすさんお疲れ様チェキ

こうして、「ぽれん十五」は盛況のうちに幕を閉じていった。
一方の、俺の「世界を繋げる闘い」も、ひとつの区切りが着いた…と思われた。
なんと、この1週間と少し後、「デコピナーの妻」の中の人と、長年ぽれんで鎬を削ったプレイヤーの方と一緒に、MAGMAZ 、CYCLONISTAのライブを観に行くという機会に恵まれた。
ここまでの色々な取り組みが報われ、晴れやかな1日を迎えられた…

これからも俺はアイドルオタクと、アンディーメンテオタクを続けていく。
この数ヶ月の間に得られた素敵な体験と、成し遂げたぜというささやかで大きな成功体験を誇りに感じながら…


最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
この長文を読んでいただいた貴方と、ライブハウスで、ぽれんの世界でご一緒できる日を楽しみにしております!

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