翻訳をする時に注意すること5つ
私が中国語を翻訳する上で実際に気を付けていることをシェアします。
翻訳のお仕事をされている方や、翻訳に興味がある方の参考になれば嬉しいです♪
私は中国語翻訳者として、児童向けの書籍の翻訳を行っています。
私はこのお仕事をする中で、子供が読むための文章を作成するために、次の5つの点に気を付けています。
①差別用語に気を付ける
文章を書く上で、差別用語を使わないことやポリティカル・コレクトネスを気にすることは重要ですが、子供向けの書籍ということで特に気を付けています。
ファンタジー性のある内容では、普段使わないような言葉が出てくるので要注意です。
例えば、以前翻訳した絵本の登場人物に「侏儒(zhū rú:こびと)」というキャラクターがいたのですが、「こびと」という言葉は「小人病」という疾病を連想させるため、差別用語だとする考え方があります。そこで、こびとという言い方を避けて「ドワーフ」と訳しました。
日本語では、差別用語や直接的な言い方を避けるために、「優先席」(誰を優先しているか言わなくても伝わる)のように言ったり、「シルバーシート」のように外来語を使ったりします。しかし中国語には漢字しかなく、また日本語のような主語などを省略する言い方では伝わらないため、どうしても直接的な言い方になってしまいます。
中国語で「優先席」は「老幼病残孕专座」と言います。残は「残疾人(cán jí rén:障がいのある人)」を表します。この字面はどうでしょう。なかなかインパクトがありますね。
中国が差別的なのではなく、中国語の特性上このような表現でしか伝わらないのです。
だから、日本語に翻訳するときには工夫が必要になります。
②児童向けの文章は小学校で習う漢字で書く
私が翻訳しているのは小学生向けの書籍なので、小学校で習う漢字だけを使用して翻訳文を作成するようにクライアントから指定されています。
小学校で習う漢字を調べるときはこのツールを使っています。
小学校で習う漢字・習った漢字を調べる(新要領)|検索チェックツール|家勉キッズ (ieben.net)
詳しい使い方はこちらの記事で紹介しています。
③表現が難しくなりすぎないようにする
子供が読んで理解できる内容にしなければならないので、なるべく易しい言葉で書くよう気を付けています。
中国語は漢字ばかりなので、日本語も漢字ばかりになってしまわないように、うまい表現で言い換える必要があります。
④小学校の学習内容に合わせて書く
小学校の学習指導要領を参照して、習う範囲内の内容にしなければなりません。
原文では、小学生向けなのに文字式や方程式が書かれていたりして、内容が適切でない場合があります。
変えても内容的に問題がなければ、文字式でなく言葉で表すなど適切な形に直します。
クライアントにもよりますが、私の場合は翻訳文は日本で出版できる内容にすることが求められており、そのまま訳すというよりは、不適切な場合は自分である程度変えたほうが喜ばれます。
⑤中国文化は説明的に書く
翻訳する文章は中国の本の内容なので、中国の人物や文化的な内容が「かの有名な〇〇が~」のように何の説明もなく書かれていることがあります。
そのような場合は、中国の文化が紹介されていることを説明する文を自分で補うか、あまり日本では有名ではない場合、さしつかえなければ削除してしまいます。
また、細かい事ですが「我が国の~」と書かれているところは「中国の」に直さなければなりません。
このようなことは、クライアントから指定されたわけではありませんが、日本で出版してもおかしくない文章を作成するために、考えてやるべきことです。
結局、直訳するだけであれば機械翻訳でもできるので、人間が翻訳する以上は内容や読み手の立場に踏み込んで考えることが必要になってくると思います。
以上、私が児童向けの書籍翻訳をする上で気を付けているポイントを5つ紹介しました。
翻訳する内容の分野によって、注意することも変わってくると思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました♪