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カフェ併設書店の問題
𝕏(旧Twitter)で、カフェを併設した書店に対する疑義のポストが、話題になっていました。2000万インプレッションを超え♥も8.5万と、賛否は分かれていますが、重要な論点かと。
今朝のNHK「あさイチ」に疑問。「新しい書店の試み」として、書店内にカフェを作って、客が自由に本を読みながらお茶や軽食をとれるようにしている、というのを称賛している。しかし、根本的なところで間違っていると思う。書店に並んでいる本は、原則として書店の所有物ではないのです。⇨
— 山田邦和 (@fzk06736) September 18, 2024
今朝のNHK「あさイチ」に疑問。「新しい書店の試み」として、書店内にカフェを作って、客が自由に本を読みながらお茶や軽食をとれるようにしている、というのを称賛している。しかし、根本的なところで間違っていると思う。書店に並んでいる本は、原則として書店の所有物ではないのです。⇨
⇨では書店に並んでいる本は誰のものかというと、出版社のもの。書店は、出版社からその本を「借りて」売っている。だから、売れ残ったら出版社に返品できる。出版社にしたら、立ち読みくらいは慣例的に目をつぶるにしても、サンドイッチをつまんで汚れた手で本を触られてそれを返品されたら困る。⇨
— 山田邦和 (@fzk06736) September 19, 2024
⇨では書店に並んでいる本は誰のものかというと、出版社のもの。書店は、出版社からその本を「借りて」売っている。だから、売れ残ったら出版社に返品できる。出版社にしたら、立ち読みくらいは慣例的に目をつぶるにしても、サンドイッチをつまんで汚れた手で本を触られてそれを返品されたら困る。⇨
⇨ただ、書店の中には出版社から「買い取り」をしてそれを販売しているところも、わずかながらあります。その場合は、本が汚れるリスクは書店が負うので書店の裁量。しかし、返品方式の書店では汚されるリスクのあることはやってはいけない。⇨
— 山田邦和 (@fzk06736) September 19, 2024
⇨ただ、書店の中には出版社から「買い取り」をしてそれを販売しているところも、わずかながらあります。その場合は、本が汚れるリスクは書店が負うので書店の裁量。しかし、返品方式の書店では汚されるリスクのあることはやってはいけない。⇨
作家側・出版社側から見た、カフェ併設書店の問題を語ってみたいと思います。
①ナメ本って何ですか
店頭で汚された本は、カバーを変えたり、本の小口側(天小口・地小口・前小口)をグラインダーで削る、舐め本という形で対応できることもありますが、そうでない汚れもありますね。
例えば本の中に汚れやシミがあった場合、返本された出版社側にはわかりませんし、それが再配布されて購入した方とトラブルになることもあります。
購入した側は、最初から付いていたと言っても、出版社側には判断しようがないですから、交換を断ることが多いですね。
⇨番組の最後で「この書店に聞いたら、いままで目立ったトラブルはない」と言い訳していましたし、タレントも「座ってゆっくり半分くらい読んだら、客はその本を買っていくでしょう」などとお気楽なことを言ってましたが、それは違いますね。⇨
— 山田邦和 (@fzk06736) September 19, 2024
⇨番組の最後で「この書店に聞いたら、いままで目立ったトラブルはない」と言い訳していましたし、タレントも「座ってゆっくり半分くらい読んだら、客はその本を買っていくでしょう」などとお気楽なことを言ってましたが、それは違いますね。⇨
「この書店に聞いたら、いままで目立ったトラブルはない」とのことですが、それは前述した通り、書店側が出版社側や購入者側でおきたトラブルを把握していないだけであって、起きていないことを意味しません。
つまり、カフェ併設書店の問題を、出版社側に押し付けている可能性があります。
②可視化されない負担
本の場合、少部数の印刷書籍だと、返本されたら廃棄せざるを得なくなり、重版もかからず、そのまま絶版ということも。
売れて平積みになるような本でも、立ち読みでカバーがよれた本は、購入してもらえず返本ということも。
書店側にも言い分はあるでしょうけれども、他社に負担をかけている可能性について、ちょっと鈍感ですよね。
⇨もちろん、「本が売れない」現代ですから、お客さんにできるだけ書店に足を運んでもらう工夫は必要ですよね。しかしそれは、書店だけに都合がよくって一方的に出版社にリスクを背負わせることであってはならないと思うのです。
— 山田邦和 (@fzk06736) September 19, 2024
⇨もちろん、「本が売れない」現代ですから、お客さんにできるだけ書店に足を運んでもらう工夫は必要ですよね。しかしそれは、書店だけに都合がよくって一方的に出版社にリスクを背負わせることであってはならないと思うのです。
この指摘は重要で、再販制度を利用(悪用?)して、出版や流通に負担をかけるのは、少なくともグッドアイデアとは言えないのではないでしょうか?
③売っているのは情報
本というのは、古書マニアにはそれ自体が、コレクション価値があるものですが。基本的には、情報を売ってるわけです。
それが、手書きの写本であっても、版木を使った少部数印刷でも、大部数の近代印刷書籍でも、電子書籍でも、同じです。
⇨そもそも「本」というのは何を売っているのか。単なる紙の束を売っているのではない。本は、その紙の上に載る「情報」の塊であり、本を売るということは情報を売ること。座ってじっくり読まれてしまうというのは、出版社にしたら情報が持っていかれてしまうが利益はゼロということになる。
— 山田邦和 (@fzk06736) September 19, 2024
⇨そもそも「本」というのは何を売っているのか。単なる紙の束を売っているのではない。本は、その紙の上に載る「情報」の塊であり、本を売るということは情報を売ること。座ってじっくり読まれてしまうというのは、出版社にしたら情報が持っていかれてしまうが利益はゼロということになる。
ずいぶん昔、コンビニエンスストアで雑誌を広げて、堂々と写メしている方がいて、注意したら逆ギレ。仕方なく店員を呼んで。「あなたのやってることはデジタル万引きですよ」と諭されていましたが。
盗んでいない、写真を撮っただけだと言い張っていて、埒が明きませんでした。このような行為についての、弁護士の意見を以下にリンクしておきますね。
④図書館も同じ問題を
ハッキリ言えば、図書館が集客のために、ベストラ―本を入れるのも、本末転倒だなと思います。
フィンランドの図書館では、Sanastoという文学者協会のメンバーになっている作家の本が借りられた場合、作家側に1冊約15円の印税が入る、という制度があるそうです。
公貸権制度の導入を、ようやく日本でも作家が求めるようになりましたが。カフェ併設書店も図書館も、出版社や
⇨たとえば、客が書店の棚からミステリー小説をとりだして、その書店のカフェで座って最後まで読んで、「あ、犯人はこいつだったのか。ああ面白い小説だった」として帰る。客は満足かもしれませんが、それは図書館であって書店ではないですよね。本が売れないんだから。
— 山田邦和 (@fzk06736) September 19, 2024
⇨たとえば、客が書店の棚からミステリー小説をとりだして、その書店のカフェで座って最後まで読んで、「あ、犯人はこいつだったのか。ああ面白い小説だった」として帰る。客は満足かもしれませんが、それは図書館であって書店ではないですよね。本が売れないんだから。
フィンランドでは、作家活動に対しても、平均一人あたり年間7000ユーロの補助金が出されているとか。
日本の出版社は文化事業として、税制的に優遇されているのですが。作家にはそういう優遇税制はありません。少なくとも、新人作家には一定期間、援助はあって良さそうですが……。そういう方向には向かいませんね。
⑤建設的な提案として
カフェ併設書店への批判ばかりしていても仕方がないので、建設的な提案として。
例えば、多くの出版社ではデジタル化が進んでおり、デスク・トップ・パブリッシング=DTPが進んでいます。好むと好まざるとに関わらず、出版の主軸は、電子書籍に変わるでしょう。
であるならば、カフェ併設書店の立ち読みように、ページ数を限定したデジタルデータの本を用意するのは、ありでしょうね。
出版社から納入されたDTP化が進んでいない出版社へのデジタル化への補助とか、あるいはデジタル作業を請け負う会社への援助など、やれることはあるはずです。
併せて、そういうデジタルデータ化されたデータを国会図書館で管理し、全国の図書館の蔵書のデジタルアーカイブと貸し出し、そして公貸権制度の確立とセットで、予算を使うほうが、クールジャパン云々より、よほど建設的では?
⑥まとめとして
まとめます。
出版社・作家・書店にとって、それぞれメリットが有る方策を考えました。
・デジタル化促進の中小出版社への援助 →中小出版社が助かる
・公貸権制度(公共貸与権)の導入と →作家と出版社が助かる
・出版物のデジタルデータ化と、国会図書館によるアーカイブ化
・デジタルデータの公立図書館への貸出 →図書館の予算が浮く
・民間のデジタルアーカイブの設立と、民間での利用の促進
・カフェ併設書店へデジタルデータの貸与 →併設書店が助かる
デジタルデータは、石英などへのデータ保存を進め、官民の文化の役割分担と相補的な部分を、増やすのが良さげですね。
個人的には、書店というのはドンドン減っていって、でも滅びることはないと思います。映画館と同じで都会の贅沢品になるでしょう。
「本屋がない」全国4分の1の自治体に書店なし 消えゆく書店に国も危機感 生き残りかけ『ブックカバー作戦』で戦う書店も|FNNプライムオンライン
上記記事によれば、すでに「20年前と比べると書店の数はおよそ半分にまで減少し、全国の4分の1の自治体で「書店がない」状況になっている」状況ですから。
では、そういう地域はどうするか? 図書館が本屋の代わりの役目を、受け持つしかないでしょうね。書店がない地域でも、公立の図書館や、小中学校の図書館はあるでしょうから。
そして公立図書館は、プリント・オン・デマンド(POD)サービスに対応して、電子書籍用のデータしか作れない弱小出版社や個人出版の本を、印刷書籍化して販売する、というのはどうでしょうか?
以下は諸々、個人的なお知らせです。読み飛ばしていただいても構いません。
筆者の小説(電子書籍版)でございます。お買い上げいただければうれしゅうございます。
文章読本……っぽいものです。POD版もあります。
筆者がカバーデザイン(装幀)を担当した、叶精作先生の画集です。POD版もあります。
投げ銭も、お気に入りましたらどうぞ。
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