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生成AIで小説が書ける時代の問題点

𝕏(旧Twitter)を読んでいると、2~3分で2万字レベルの短編小説を、生成AIが作ったそうで。個人的には、その内容についてはわからないので、なんとも言えませんが。Novel AIを実験的に使ってみた感じでは、ちゃんと読めるレベルの掌編には仕上がっていますね。

そして、蝉川夏哉先生のこんなポストが流れ的ました。

AI小説が公募に送られてくるようになったら、でいちばん辛いのが、「人間の書いた所は読みにくくて読みにくくて仕方なかったのが、AIが書いたと思しきところに到達した途端、それまで藪を漕ぎながら進んでいた視界が晴れ、開けた草原の爽やかさを感じた」とか寸評で人間に書かれることだと思う。

https://x.com/osaka_seventeen/status/1867540101976535338


①生成AIと校正と

厳しいジョークですが、AIによる文章生成は、文字校正もセットでしょうから。そもそも、そんなに破綻した文章を吐き出しませんから。
AIに名文を書くのは難しくても、読みやすい文章(=破綻していない文章・文法的におかしくない文章)を書くのは比較的、簡単でしょう。

投稿者の多くは、名文を書こうとしてあれこれこねくり回して、読みにくい文章を書いているパターンが、多いようで。
筆者の実体験としても、それはもう間違いないところです。
身につまされます。

また小説も出している出版社の、投稿作の下読みをする編集者(だいたい新人やベテランの遊撃的なポジションの人が駆り出される)から、日本語として破綻した投稿作の、愚痴を聞いたこともありますので。

②漫画は小説の眷属

MANZEMI講座の、単発講座やゼミでは、文章講座を開くことがたまにあります。
サイレントマンガはともかくとして、漫画の半分は文字でできていますから。アニメーションよりも、小説に近い表現が漫画ですから。
文章力は必須です。

でも、そこでは名文の書き方は教えませんし、教えられません。
名文とは才能が生み出す、イレギュラーなものなのであって。
合理性の積み重ねでは、名文は生み出せないのです。

このプロンプトは凄いですね。o1ですが、1回の指示で約2万字の小説が一発で作成できました。

o1は、長い推論を可能にするために全体のトークン数制限を緩和していることが理由だと思います。

「異世界コンビニ経営始めました 〜おにぎりで魔王を倒す〜(一撃で2万字)」
https://note.com/it_navi/n/nd13

https://x.com/itnavi2022/status/1866784259119382564

③情報と感情と

講座で教えるのは、校閲の方法とか、小説や漫才の台本との違いとか。
基本は、平凡だが誤解の余地がない文章を簡潔に書くコツ、ですね。

しかし誤解の余地がない文章は、どうしても回りくどく冗長になりがちですから。

精確(正確ではない)に書く、簡潔に書く、の二段構えを教えます。
でも、精確に書くには、表現のロジックが必要です。
それは、感情に訴えかける詩文とは、別物ですから。
ここが難しくて。

例えば、清水義範先生の小説『国語入試問題必勝法』に、定年退職した老人たちが、リレー小説を書く『人間の風景』という短編が収録されています。

④『人間の風景』

元新聞記者や八百屋など、素人の滅茶苦茶なリレー小説が紡がれるさまを描いた、コメディ小説なのですが。
元警察官の担当したパートが、事情聴取の調書みたいで無味乾燥な硬い文体なのですが、でも文章としては一番マトモなんですよね。

調書は、読む人に伝わるのが肝心ですから。

でも、調書は精確であっても、感動はしないですよね。
むしろ、エモーショナルな要素は、邪魔でさえあります。
やはり、人間の感情を動かすエモーショナルな力は、詩文のような非合理(不合理ではない)な力が、必要ですから。

でも詩集と違って、小説や漫画、あるいはアニメや映画でも、名台詞や名文って数箇所ぐらいですよね。

ところが名セリフや名文は、心に強く残り。
投稿者は真似しがち。

⑤名台詞の比率は

結果、全部を名文と名台詞で埋めようとして、読みにくくて仕方がない投稿作を、書くことに。

文章の97%は精確さを追求し、名文名台詞は3%でいい、と割り切ると。
書く側もずいぶん、気が楽になるのではないでしょうか?
漫画原作だと、拙作『浮世艶草子』シリーズは毎回、24ページが基本でしたから。およそ3箇所ほど、読者の心に残る決め台詞をいれるよう、心掛けてはおりましたが。

さらに、絵画的な名文名台詞と、連環画的な名文名台詞がありますから。

ここらへんは、有料で教えていることなので、具体的な内容は避けますが。
これだけでもヒントになる人、思い当たる人はいるでしょうから。
参考にあんれば、幸いです。


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篁千夏
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