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小説うめこシリーズ

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ネタ元になった「うめこ@猛禽類の社畜 」さまより、公認をいただきましたので、ここに「うめこシリーズ」として、マガジンにし、もっと多くのうめこさんを知ってもらうように頑張ります。
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#うめこ

記憶

僕は、たぶん海の傍で生まれたんじゃないかな 一番古い記憶は波の音 変わり映えのしない海の傍の町 そこで暮らしていたけど 街へ出てみようと思った 都会の街は、空が狭くて驚いたけど 食べるのがやっとの生活 住むところは小さなアパートの一室 それにも慣れて日々の暮らしが過ぎて行き 気が付いたら波の音が懐かしい歳になっていた 何時かは波の音の聞こえる町で暮らしたい そんなことを考えていた でも、それは夢 かなえることは難しい 都会の喧騒に埋もれてしまった僕に 一緒に海辺の小

メイと呼ばせる女 外伝(1)

おひかえなすッて! 手前、生国と発しますは、 房総のさびれた漁村で生まれました。 房総、房総言いましても、恥ずかしながら小せい街と海山で育ち、 縁あって東京は新宿にたどり着きました。 柳川組の木村の兄貴に拾われ、 佐々木の兄貴の下で任侠を学んでいる 佐藤壮一と申しまㇲ。 自分、自慢じゃありませんが、頭には何もありません。 ただただ、木村の兄貴の任侠を目指していまㇲ。 人呼んで房総の壮一と申しまㇲ。 うーん、房総の壮一じゃ決まんねぇなぁ。 もっとカッコいい

他愛もない会話で今夜も

「珍しいジンが飲めるのよ。」と、 うめこさんから電話があったのが午後7時、 仕事も一段落して、帰ろうかとしている時だった。 場所は広島駅の近く、Craft Bar 196 と言うお店らしい。 きっと今夜も強いお酒を飲んでいるのだろう。 さっさと、机を片付けて広島駅に向かう。 扉を開けると、右手をひらひらと蝶のように振り 「ここよ、ここ。」 左手でグラスを持ち、並々とはいっているのはジンロックだろう。 「こんばんは、何を飲んでいるのですか?」 「えぇと、どこかの島のジン、

うめこ 18歳、夏(3)

そう言えばご飯を食べて歯磨きをしていないのを思い出し、 「歯を磨いて良いかしら?」と聞くと 「そうだね。僕も歯を磨くね。」と、二人並んで台所で歯磨き。 どきどきしながら、これから佐藤君と一つになると思うと、 好きという気持ちがあふれそう。 後ろで、ミニコンポから聞こえる音楽に、 「何と言う曲ですか?」 「これ、The Police と言うグループの Every Breath You Take と言う曲。」 「どんな意味なの?」 「僕はずっと君を見ているよって言う歌かな。」

うめこ 18歳、夏(2)

神社でのデートの後、クラブが終わり、皆が帰った学校の 部室で二人きりでたくさん話をしましたよね。 映画の話が多かった気がします。 必殺!とブレイクダンスのどちらが先に上映されるとか、 ぴあをめくっては、手が重なったり、 マッチと明菜の恋愛映画が来年早々には見れるらしいとか、 来年の話をしては、照れていたのを思い出します。 帰りには、手を繋いで駅まで肩を並べて歩きましたね。 そう言えば、プラネタリュムにも行きました。 暗い中、星を見上げて、キスしてくれたのが、 初めてのキスで

うめこ 18歳、夏(1)

高校を卒業して、東京の杉並区にある短期大学に  合格したうめこは地元から身の回りのものだけを持ち、  東京で住むところを探していた。  高校の先輩のつてで、東中野の風呂なしのアパートを見つけ、  早速、そこに住むことにした。   短大まで、電車と徒歩で約30分、安いだけが取り柄のアパート。  それでも、初めての一人暮らし、  希望に満ちた日々が始まる予感でいっぱい。  短大の授業は月・火・木・金曜日は 9:00 からで、 水曜日は10:40 から 1 時限だけと言う、 満員

Bar KT's TAVERN で飲みましょう

早稲田神社の夏越祭の前日、うめこさんに電話をする。   「Bar KT's TAVERN で飲みますので、会えませんか。」  お店に来る前に、早稲田神社に寄り厄落としをしてきたが、  染みついた厄が全て落ちたかわからない。  うめこさんに会うのだから、厄は無い方がいいに決まっている。  そんなことを思い厄落としをしたが、 煙火の火薬のにおいがついてしまった。  お店の扉を開けて、のぞき込む。 うめこさんが、呼ぶようにグラスを上げる。  隣に座って、 「何を飲んでいるのですか

誰かと飲みたい夜もある

一人、BAR BUTLER と言う、  ジャズバーでメーカーズマークをロックでグラスを傾けている。  流れているのは、Miles Davis の Walkin' だ。 扉の開く音がした。  扉の方を振り向くと、白いストールと、  漆黒のロングドレスの裾をなびかせ、ピンヒールを響かせて、  うめこさんが入ってきた。  「うめこさん、これから電話をしようとしていたのだけど。」 聞いているのか、聞いていないのか、 「あぁ、表は雪よ。  多分、電話がかかって来そうな気がして、出て来た

いくつ諦めていくのだろう…by Umeko(再録)

2021年9月23日 08:07 の記事の再録になります。  以前、  友達のうめこについて書いたことがある。  うめこをざっくり説明すると、面倒くさい女だ。  モデル張りの肢体とアイドル並みの顔を持つ、 それなのになぜ彼氏が続かないと悩んでは、相談してきた。   それは、お前の性格に問題があるからだろうとは思ったが、 良い友達の自分は言わないで、だまって酒を飲みかわす。  奢るだけの財力はあるうめこ。   ソープに売る予定をしていた女子高生に逃げられ、 組の金にも

メイと呼ばせる女(4)

下弦の月がビルの谷間をうっすらと照らしている。  下唇にタバコを張り付けたまま、裏通りの壁に寄りかかり、  壮一と泣かせの隆二がチンピラに焼を入れているのを眺めていると、  大通りの方から、女の叫び声が聞こえた。   「壮一、警察が来る。それぐらいにして行くぞ。  ほら、隆二もいつまでもぶん殴っていないで、行くぞ。」  「はい、こいつどうします?」と、壮一が聞く、  「そうだな、事務所につれて行って、奴の上を呼び出すか。」 「でも、こいつはうちのシマ内で、薬を流していたんす

メイと呼ばせる女(3)

週末の一番忙しい時間、事務所で電話が、鳴っている。 事務所には誰もいないのか、取る様子もない。 親父に礼をして、電話を取ると、 バー雅から、 口開けで来た客が暴れて手が付けられないと言う。 親父が行けと手で合図をする。 すぐさま、携帯で壮一を呼び出し、 「親父を一人にしておくのか!」と叱る。 手下をすぐ事務所に送りますと言うので、 親父にその旨を伝え、バー雅に急ぐ。 ここいらでは、珍しいぼったくりでもない、普通のバーだ。 バーのある雑居ビルの5階に着いたら、外まで聞こえる大

課長 志摩うめこ 34才 (2)

低く聞こえる絶望の歌。 He was singing Bye-bye, Miss American Pie Drove my chevy to the levee But the levee was dry And then good old boys were drinkin' whiskey and rye Singin' this'll be the day that I die This'll be the day that I die 新しい、部屋着に着替えてシ

メイと呼ばせる女(2)

天津飯の甘い香りが漂うアパート窓の向こうに、メイの部屋が見える。 食事の用意を始めたメイ。 「壮一、狂犬キムと、泣かせの隆二と、 てめーの部下を三人ほど呼べるか?」 「すぐ、連絡をしまㇲ、兄貴。」と言い、どこかに電話をする。 「すいません、兄貴。  キムあにいと隆二の兄貴は、組の仕事ですぐにはこれません。 手下は30分もすれば来れまㇲ。」 「キムと隆二は何時頃これるか確認しろ。」 「はいっ。」と電話で組に確認をしている壮一。 「キムあにぃは2時間後には、隆二兄貴は3時間後

課長 志摩うめこ 34才 (1)

うめこは名字で呼ばれるは恥ずかしいという。  地元では珍しい苗字らしく、  身元がすぐにしれるから、名前で呼んでほしいと言う。  小さな田舎町、隣近所も皆知り合い、  いや、親戚の様な田舎町に生まれ、  中学、高校まで同じ町で暮らしていた。  うめこは、高校を卒業する時に、  短大か専門学校と迷ったが、短大を選んだ。  日本中のどこの田舎町にでもいそうな生い立ちのうめこ。  何が恥ずかしいのか、故郷のことはあまり話したがらない。 短大を卒業してから、親の進める地元の