【子育て支援者向け】育児に参加する父親を増やす方法
父親の育児参加が求められるようになり、国も育休の取得を後押ししています。
日本の育休制度は実はとても優れており、世界の中でも類を見ないほど充実しています。
ですが、実情はなかなか育休をとれていない父親が多く、令和5年度の男性育児休業取得率は30.1%の育休取得に留まっています(女性は84.1%)。20年ほど前はほぼ0%だったことを考えると大きな進歩とはいえ、女性に比べるとまだまだ低い数値です。
ちなみに、国は2025年までに父親の育休取得を50%にすることを目標にしています。
果たして達成できるのでしょうか?
私は日本の育休制度は確かに優れていると思いますが、実際の支援の場にもっと父親を支援するコンテンツがあるとより父親がイキイキと子育てができると感じています。
父親の子育ての現状については以前記事にしているのでよろしければご覧ください。
今回は、父親支援について私が必要だと感じていることをお話していきます。
父親の育児参加を社会的に後押ししようという流れの中、従来の子育て支援から少し視点を変えたものも今後必要になってくると思います。現役の子育てパパとして、一支援者として感じたことを綴っています。少しでも参考になると嬉しいです。
父親の子育て支援を進めるにあたってまず必要なこと
子育て支援の研修などでよく、「どうやったら父親の参加が増えますか?」と聞かれることがあります。
父親も母親も、親であることに変わりはないので、本質的には「子育てに前向きになれるきっかけづくり」を意識してプログラムを作ります。
父親の子育て支援において、まず基本として押さえておきたいのは以下の3点です。
①父親も支援を受ける存在であるという認識を持つ。
②父親が参加しやすい日程を設定する。
③主語を「ママ」だけでなく「パパ」も含める。
①父親も支援を受ける存在であるという認識を持つ。
これは当たり前のようですが、父親本人にも子育て支援者にも「父親も支援を受ける存在である」という自覚がないことがあります。
父親の中にはそもそも誰かに頼ることに慣れていないという方も多いです。しっかりパートナーを支えてこその父親だという自負はあるものの、自分も支援を受けていいいという発想がないのかもしれません。
よって子育てで行き詰った時に助けの求め方がわからなくなります。
支援者にとっては、今までが母親中心の支援だったので、父親のニーズが見えにくいのではないかと思います。
また、以前の父親像と現代の求められる父親像に大きな乖離があるため、父親が支援を受けるイメージが浮かばないということもあります。
つい、「ママのサポートしっかりしなさいよ」と言いたくなることもあるでしょうが、父親も父親なりに悩んで頑張っています。
父親は母親を支援する立場でもありますが、支援を受ける立場でもあります。
まずは母親同様、父親の気持ちも受け止めていきましょう。
②父親が参加しやすい日程を設定する。
子育て支援センターなどは平日の午前から夕方まで開館しているため、日中仕事がある父親は支援センターの利用が物理的に不可能であることが多いです。
日曜に開館している支援センターもありますがまだそこまで多くはない現状です。
自治体の状況にもよるので「絶対に日曜も利用するようにするべきだ」とは言いませんが、年間のうちに数回でも休日に子育てのイベントがあると父親の参加も増えると思います。
③主語を「ママ」だけでなく「パパ」も含める。
よく見受けられるのが
「いつも頑張るママの笑顔のために」
「ママと子がくつろげる空間を」
などのワードで、これらは支援センターの紹介文や子育て講座の案内によく書いてあります。
しかし、よく見ると「パパ」や「父親」のワードが入っておらず、父親からすると、その時点で自分が対象外になってしまうので、「自分は行ってはいけない場所だ」と思ってしまいます。
おそらく無意識のうちにそのような表現を用いていると思うのですが、広く様々な人が利用することができることを念頭に表現を考慮すると、より父親の参加も増えると思います。
以上の基本的なポイントを押さえた上で、次は今の父親にはこんな支援が必要ではないかという私のアイデアをご紹介します。
今、父親に必要な具体的な支援
アイデア1.父親が子育てコミュニティに属することができる機会を作る。
育休を取ると子どもと向き合って成長を日々感じられる反面、社会との隔絶感を感じる父親もいます。また、父親は子育ての悩みを相談できる機会はなかなかありません。
父親が子育てについて話ができる場は今とても求められています。私がとったアンケートでは、もっと子育ての話がしたいと答えている方が多かったです。
子育て支援センターを利用する父親は増えてきましたが、まだまだ数は少なく、悩みを話しやすいかと言われると父親からすると難しいところもあります。
「こんな悩み話していいんだろうか」
「子どもと出かけるだけでも緊張するのに、その上、人と話すなんて無理」
「間違ったことを言ってしまったらどうしよう」
そんなことを考えるとハードルが高くなってしまいます。
何でも話して大丈夫!
ちゃんと話を聞いてるからね!
というメッセージがその場に雰囲気として内包されていることが大事です。
私が毎月開催している、父と子の遊びの広場「らんちすなっく」では、初めての子どもとのお出かけで来た方にメダルの授与をしたり、父の日にみんなで「いつもお疲れ様」と讃えあったりしています。
自分はここにいていいんだ!という安心感を父親も求めています。
ありのままの自分を受け入れてくれる。
そういった場に人は集まります。
アイデア2.プレパパを巻き込んだ場づくり
男性は女性と違い、出産までに体の変化はほぼ起こりません。個人差はありますが、どうしても親としての自覚を持つのは女性よりも後になる傾向があります。
そして、いざ子どもが生まれるとその日から育児が始まり待ったなしの状況になります。
ですので、父親においては出産前の行動が重要になってきます。
産前の父親におすすめのアクションプランについては過去に記事にしているのでこちらをご覧ください。
と、プレパパ向けのアクションプランを紹介したものの、伴走してくれる仲間がおらず一人で頑張ってもなかなか継続が難しいものがあります。
なので、私はプレパパ向けの子育て連続講座を実施したいと考えています。
自治体や産婦人科で両親学級が行われることはありますが、一回限りだったり、母親のサブ的な扱いで父親が参加という形だったりしてなかなかパパ友作りまでは発展しがたいです。
ですので、2〜3回の連続講座をプレパパに受けてもらい、具体的な家事・育児のノウハウを知るとともに仲間作りもできるような場を設けます。また、その中で先輩パパ達との交流も持てれば、出産後も途切れることなくコミュニティに属することができます。
具体的な連続講座の内容としては、例えば、初回は夫婦での料理教室、2回目はパパだけで片付けなどの家事レベルアップ講座、3回目は自分の心を整えるメンタルヘルス講座などです。
料理・片付けなどの家事は独学だと要領が掴めないことが多いので、一度専門家に基礎だけでも教えてもらうとその後の生活に大きなプラスとなります。
また、現在は男性も産後うつになる方が多かったり、育休後に仕事と家庭のバランスが取れずにメンタル不調になったりする方もいます。
少しでも自分でメンタルを整える方法を知っておくとその予防線になります。従来の子育て支援では、メンタルヘルスに関する講座が少なかったですが、特に父親に関してはその後の生活のことも考えると必要な知識だと思います。
男性の自殺率は女性の2倍あり、メンタルヘルスの知識は男性にとってもっと身近であるべきものだと思います。
それから、育休の取得の方法や職場とのコミュニケーションの取り方を社労士や産業医から学ぶ機会もあるといいのではないでしょうか。
母親は、自身や子どもの健康のことなどより身近な事柄に対する支援が必要な傾向にありますが、父親の場合は、社会との関係をいかに保って家庭を築いていくかという中長期的なビジョンを持てる支援が必要になります。
アイデア3.地域で父親の活躍の場を作る
三重県四日市市で行なっている取り組みとして、父親マイスター制度というものがあります。
これは、子育て講演、親子のふれあい遊び、おそうじ講座などの連続講座「父親の子育てマイスター養成講座」を父親に受けてもらい、父親マイスターに任命する制度です。
父親マイスターに任命された父親は、父親の子育てサークル「パパスマイル四日市」のメンバーとして市と協働して、パパのニーズに合った内容の講座を開催します。この取り組みは全国的にも珍しく、2010年から現在まで続いています。
このように、父親が始めは与えてもらう立場から、与える立場に変わっていくことで、「自分はもっと子育てに前向きになれるんだ」という自己効力感を抱くことができます。
いくら知識やスキルがついたとしてもそれを発揮できる場や感謝される機会がなければそれらを生かし切れているとは言えません。
人は、富むから与えるのではなく
与えるから富むのです。
父親が地域で活躍できる場があることで、与えることができる立場になり、それが父親自身の幸福にもつながっていきます。
幸せな父親によって育つ子どもはまた幸せです。
私は、そのような好循環が起こる仕組みつくりをしていきたいです。
最後に
さて、いかがだったでしょか。
今回は子育て支援者向けの記事だったので少々固い文面になることもあったかと思いますが最後まで読んでいただきありがとうございました。
きっとこの記事を最後まで読んでいただくような方は子育てに強い想いを持たれていると思います。一緒に子育てしやすい環境を作っていきましょうね。
今が父親の子育て支援のターニングポイントです。
父親からも、もっとどういう支援が必要なのか、何に困っているのかをどんどん発信していってもらいたいです。そのことが次の父親になる方への助けになります。
支援者も、一度既存の価値観を見つめ直しアップデートしていきましょう。
そして温かい子育てのバトンを次につなげていきましょうね。
それでは、
さよなら あんころもち
またきなこ!!!
こそだてパパのわ『ちくわ』 坪田
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