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【子育て】知ってほしい、父親の「今」。

最近は本当に子育て支援が以前と比べて充実してきた。

しかし、それらの対象が自然と母親に設定されていることが多くないだろうか。

「ママのための安心できる居場所」
「子育てに悩めるママたちのために」

これらは子育て系のイベントや講座でよく見かけるワードであるが、いずれも対象が母親である。どうして支援の対象が父親になるになることが少ないのだろうか?

今回は現代の父親の置かれている環境について筆者の視点で話していきたい。

筆者は、現役の保育士であり、16年間保育と子育て支援に携わってきた。また自身も4才の娘を子育てをしている父親であり当事者でもあるので、その視点も交えて、父親が今何に困っているのか、またその原因についてお話ししていきたい。


悩みを話せない父親たち


「有害な男らしさ」という言葉が最近少しずつ認知されてきている。


「男のくせに泣かないの!」
「男は一家の大黒柱なんだから強くあらねば!」
と、今の子育て世代の父親は幼い頃から男性としての強さや逞しさを強要されてきた方も多い。

今でこそジェンダーに対する意識が変わってきたので以前よりもこういった言葉は少なくなってきたとは思う。

しかし、実際のところ世帯収入の半分以上を男性が担っている家庭が多く、社会的にも父親の育児参加が強く求められている現代では、男性が果たさないといけない責務はさらに重くなっているように感じられる。

戦前から高度経済成長期を経て現在に至るまでの父親の子育ての変遷については過去の記事で話しているので良かったら参考にしてほしい


こういった中で大人になった男性の中には、「子育てにおいても弱音なんて吐いてはいけない」と思っている父親は少なくない。

そもそも子育ては、一人で行うものではなく、周囲の助けを借りながら社会の中で行うものだ。ヒトは社会的に子育てをしていくことで繁栄してきた。

苦しかったら助けを求める、出来ないことは出来ないと認めて周囲の手を借りるなど、子育てをしていると必ずどこかで一人では立ち回れずヘルプが必要になる場面がある。

子育てにおいて親が周囲にヘルプを出すことは、親になるはじめの一歩とも言える。

しかし男性の場合はここで「有害な男らしさ」が邪魔をする。
「ヘルプを出すこと=情けないこと」と捉える父親が実は相当数いるのだ。

男性からすると、幼い頃から強さや逞しさを強要されて育ったのに、いざ自分が親になったらその反対とも言える行動をとらなければならないことはとても難しいことである。

保育・子育て支援の現場でも、子育ての悩みを話せる父親はかなり少ない。

それは、父親自身が子育ての悩みを相談していいという認識がなかったり、実際に父親が気兼ねなく悩みを話せる環境が整っていなかったりすることが原因である。

それでは、今から父親への子育て支援はどうあればいいのか?

子育てを学ぶ機会の乏しさ


女性は妊娠すると、妊娠届を持って役所に行く。ここで母子手帳を受け取り、産科で産婦人科医や助産師の診察・栄養指導や教育を受ける機会がある。授乳や沐浴やおむつ交換などの方法も学ぶことができ少しずつ母親になるための支援を受けることができる。

一方で、男性には子育てについて学ぶ機会が圧倒的に少ない。自治体によっては両親学級という形で夫婦で参加できるものもあるが、ここでも父親がメインではなくサブ的な形での参加となる。

両親学級や母親学級はあるが、父親学級はほぼないのが現状だ。

また、現代の父親は自分自身が父親に子育てをしてもらった経験が少なく、はっきりとした父親像を持てていないことが多い。

自分達が子どもの頃の父親と現代の父親では求められているものが大きく異なる。

父親は稼ぎがしっかりしていればOKという時代ではなく、家庭に入り子育てにもしっかりコミットすることが求められる。

また、「稼ぐ」ことにおいては、変化の激しい時代ではなかなかに難易度が高くなっている。

父親にとって子育てが難しくなっている現状であるにも関わらず、父親が子育てについて学べる機会が少ないことは早急に改善する必要がある。

子育てが始まる産後ではなく、産前に父親が支援者と繋がって学ぶ機会を得ることで、子育ての不安は少しずつ少なくなっていく。

母親よりも手薄な父親への支援


父親向けの子育て支援が手薄になっていることは危険なことであると筆者は感じている。

実際、産後にメンタルの不調に悩む人の割合は男女ともに同程度であり、子育ての悩みは性別によらないものである。

実際に、国立成育医療研究センターの調査では以下のことが分かっている。

夫婦が同時期に「メンタルヘルスの不 調のリスクあり」と判定された世帯は 3.4%に達することが分かりました。この背景には、父親の長時間労働や母親の睡眠不足、子どもが生後半年から 1 年の時期であること なども示唆されています。また、父親が産後 1 年間にメンタルヘルスの不調のリスクありと判定される割合(11.0%)は、母親の場合とほぼ同程度(10.8%)でした。
これらのことから、産後は母子へのケアや支援に加え、父親への健康管理や支援の体制を整えていくことも重要だと考えられます。

国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
“日本の父親における精神的な不調の頻度と
そのリスク要因”
国立成育医療研究センターホームページ
2020-08-27
https://www.ncchd.go.jp/press/2020/pr_20200827.pdf
(参照 2024-09-04)


と、ほぼ同じかつ、やや男性が高い結果になっている。


これには、私は前述した「有害な男らしさ」も深く影響しているのではないかと考えている。

誰かに頼ることが必要な子育てにおいて、頼ることに慣れていない父親はスタートラインから前に走れていないような状況だ。

そもそも、今の子育て支援では、父親は「母親を支援する側」として捉えられていることが多い。

「父親も支援を受ける対象である」

ということが、社会的にまだまだ意識が薄いように感じられる。

また、子育て支援の場ではほぼ全てが女性の支援者が担っている。特に私達よりもひと回り年上の方が子育てをしていた時代は、「父親は仕事さえしていればOK」な時代であり、大変な思いをして子育てをしてきた母親が多い。

その方達が支援者となり、母親を支援しているおかげで現在の子育て支援が成り立っている。

母親への子育て支援が充実してきた今だからこそ、父親への支援を見直していきたい。子育て支援者にとっても、昔のステレオタイプの父親像から一旦離れて、「今」の父親の心にもっと寄り添ってほしい。

確かに、父親はあまり自分のことも話さないし、子育て支援の場にもなかなか現れない。
しかし、子育てへの意識は確実に父親の中で高まっている。

父親支援においては需要と供給のバランスが取れていない現状であるが、逆に言えば供給が足りていないので出来ることがたくさんある。

まずは父親が安心して集まれる居場所を作ることで、父親の「今」が見えてくるのではないだろうか。

最後に


なかなか自分のことを話さない父親の悩みを知ることは現状では難しい点もあるかもしれないが、筆者が関わってきた中では、「もっと話したい」「いろんな人の子育ての経験談を聞きたい」という父親は少なくない。しっかりと支援を求めるニーズはあるのだ。


子育て環境は今が転換期だと思うので、当事者である父親も、それを支援する側の人間も、もう一度子育てとは?支援とは?と見つめ直すことが必要な時期にきている。

できることからひとつずつ進めていきたい。


こそだてパパのわ『ちくわ』では、毎月第四日曜日に父と子の遊びの広場「らんちすなっく」を開催しています。
遊びの中で子育てについて父親同士が情報を共有したり仲間作りをしています。
興味のある方は参加費無料・予約不要なので気軽に参加してほしいです。
詳しくはInstagramにて↓


それでは

さよなら あんころもち
またきなこ!!


こそだてパパのわ『ちくわ』坪田



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