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二つの『法華経』
1.二冊の現代語訳
「法華経とは何か」を知ろうと思ったら、まずは現代語訳を読むと良い。
最近は植木雅俊訳『法華経』と大角修訳『法華経』の二冊が有名で、共に角川文庫になっている。
2.二種の底本
違う訳者の『法華経』がなぜ同時期に同じ版元から出ているか。それはスタンスの違いがあるからだ。
前者はサンスクリット語の原本から直訳しているのに対し、後者は日本で親しまれている鳩摩羅什漢訳版を底本としている。それによって何が違ってくるかといえば、サンスクリット版はいわば初版であり、後に法華経に組み込まれた観音経や提婆達多品など重要肝文が抜けている。
対して羅什版はこれらの重要肝文が組み込まれている上、最重要三品の内のひとつ「方便品第二」にいわゆる「十如是」が書かれている。これは翻訳時に羅什三蔵が付け加えたともいわれていて原本には存在しないが、この十如是があるが故に方便品は最重要三品のひとつになった。
3.どちらを選ぶか
『法華経』をあくまで哲学・思想の一種として読むなら前者で良いが(『思想としての法華経』など副読本も充実している)、信仰や儀礼のために読まれてきたテキストとして知りたいなら後者をおすすめする(訳者もそのような儀礼のために記されたことを意識して訳した旨を述べられている)。
あるいは両者を読み比べてみても良いかもしれない。
植木雅俊さんのサンスクリット版直訳は訳文としての評価が非常に高く、信仰のためのテキストとして知りたい方でも読む価値は充分ある。
↓以下は本文中で紹介した二冊