映画「バズ・ライトイヤー(Lightyear)」
(ネタバレあり)
ピクサーのファンの私たちなら、「バズ・ライトイヤー(Lightyear)」を見逃すわけにはいかないでしょう。先週、映画館に観に行ってきました。
「トイ・ストーリー」シリーズのウッディとバズ・ライトイヤーがよく知られています。映画「バズ・ライトイヤー」の冒頭で、ちゃんと「トイ・ストーリー」との関係を説明してくれました:
『1995年(「トイ・ストーリー」の放送年)、アンディという少年がある玩具(バズ・ライトイヤーのフィギュア)を送られました。その玩具のモデルはアンディが大好きな映画のキャラです。この映画は、その映画です。(”This is that movie.”)』
つまり、バズ・ライトイヤーの格好や口癖などを除いて、今回の映画の「バズ・ライトイヤー」という人物は「トイ・ストーリー」の「バズ・ライトイヤー」というキャラとは別人です。制作側が別の声優を今回のバズ・ライトイヤーに担当させたことも理解できます。もし、「トイ・ストーリー1」から「トイ・ストーリー4」までのその唯一無二のバズ・ライトイヤーへの感情を持ちすぎて、この映画「バズ・ライトイヤー」を観に行ったら、全然関係がないことに気づいて、がっかりするかもしれません。
もちろん、ピクサーの映画なのですから、全く別のシリーズとしても、観る価値があると確信しています。久しぶりの映画館鑑賞ですから、「4DX」のバージョンを観ました。「4DX」とは、「CJ 4DPLEX」という韓国会社が開発した体感型の映画館システムで、座席稼働や水や煙などの効果を映画の内容と合わせて、観客に映画をもっとリアルに楽しませる技術です。コロナの前に、日本で「4DX」の「ドラゴンボール超ブロリー」と「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」を鑑賞したことがあります。「バズ・ライトイヤー」は飛行のシーンがたっぷりで、「4DX」の座席稼働は「ドラゴンボール」や「スター・ウォーズ」より激しい気がします。ちょっとやりすぎたと思いますが、子供にとって、面白い体験になるかもしれません。映画レビューサイトによると、「面白くて、真っ直ぐな冒険ストーリー」というのがは映画「バズ・ライトイヤー」に対する共通の意見だそうです。
この映画が伝えている一つのメッセージは、自分の手だけではなく、もっとチームメイトを信頼し、みんなの力と合わせたら、目標を成し遂げられる、ということです。こういうメッセージは、アニメでよく見られます。ポケモンの短編作品(「ピカチュウのなつやすみ」や、「ピカチュウたんけんたい」など)で、同じようなチームワークのテーマはよくあります。「バズ・ライトイヤー」に対するほとんどのレビューはこのテーマだけで映画「バズ・ライトイヤー」を評価して、他の大人向けのメッセージが見逃されていて、ちょっと残念です。ピクサーの作品の特徴といえば、幅広い年齢層にも共感できるネタを見つけられることだと思います。恐縮ながら、自分が共感できたメッセージをここで二つシェアしたいです。
一つ目はストーリーの「時間の遅れ(time dilation)」のことです。バズ・ライトイヤーは、目標を遂げることにこだわり、繰り返して飛行実験を行なっています。しかし、四分間の飛行実験をやる度に、地上の世界はもう四年間経過します。仲間が結婚したり、仲間の子供が生まれたり、仲間の子供が結婚したり、仲間の孫が生まれたりしている中で、バズ・ライトイヤーはまだゴールを追いかけています。現実の私の妻は、先月やっと大学院で博士号を獲得しました。長い間の努力を経て、ゴールに達するのはありがたいことなのですが、気がついたら、同い年の友達は子供のことばかり話し合っています。現実で、起業したり、アーティストになりたがったりしている人々が、家庭を築くことを諦めて、夢を叶えることを頑張っているのはよくある話です。映画のバズ・ライトイヤーもこんな道を選びました。もしバズ・ライトイヤーが惑星から脱出するための飛行実験を諦めて、ちゃんと地上で暮せば、ピクサーの「Mr.インクレディブル」の家族団欒の物語の主人公になれるかもしれません。この「時間の遅れ」は、アインシュタインの「相対性理論」のことではなく、人生の取捨選択に喩えられていると思います。
二つ目は悪者のザーグの設定です。「トイ・ストーリー」のザーグは元々冗談半分でバズ・ライトイヤーの父親という設定ですが、映画「バズ・ライトイヤー」のザーグは「過去の誤りをやり直すために、未来から来たバズ・ライトイヤー」になっています。つまり、過去に執着しているのは邪悪な行為で、現実を受け入れているのは正義だ、と映画がザーグとバズ・ライトイヤーのことをこう描写しています。「目の前にある幸せを大切にすべき」とは、よく知られている教訓ですが、映画のバズ・ライトイヤーも色んな経験を経てから、この観念を身をもって感じられるようになっています。同じ心から生み出した両極端の価値観を持っているバズ・ライトイヤーとザーグが、対立の関係になるのは、この映画「バズ・ライトイヤー」の一番大切なストーリーだと思います。
この映画の対象年齢層が一応子供を含めていますから、曖昧に主役と悪者の是非正邪を描くわけにはいかないです。バズ・ライトイヤーは正義の味方で、ザーグは悪者だ、と映画「バズ・ライトイヤー」ははっきり話し分けています。たまに、私の心の底に住んでいるザーグも「それをやり直したいなあ」と言い出しますが、ピクサーの価値観によると、自分の「ザーグの声」は邪な考えだとみなされているようです。バズ・ライトイヤーのように、「目の前にある幸せを大切にする」ことを、見習い続けたいです。
が、映画の結末のとおりに、ザーグを完全に消滅させるのは難しいです。私も、過去をやり直したいザーグの声をバラさずに、暮らしていきます。