マラウイで咲く南半球の桜~世界三大花木の1つ「ジャカランダ」~
大学の並木道にジャカランダとホウオウボク
マラウイ首都郊外のリロングウェ教員養成大学の校門をくぐると、100mほどの並木道がある。
私はこの並木道が好きだ。マラウイの他の大学にもいくつか行ったことがあるが、こんな見事な並木道は他に見たことがない。
校門をくぐって、右手側にはジャカランダ(紫雲木:シウンボク)の紫。反対の左手側にはホウオウボク(鳳凰木)の赤。奇しくも、世界三大花木のうちの2つが並んでいる。
それじゃあもう1種類は?と気になったので、調べてみたら、カエンボク(火焔木)というこれまた赤い花を咲かせる花木で、大学構内にはなかったが、首都の中心部で見つけた。
世界三大花木のうち1種類欠けているものの、2種類が並んでいるだけでラッキーなことだ。そんな状況にも関わらず、花が咲いていても、学生たちや外部からの通行人は誰も気に留める素振りはない。日本人なら写メの嵐だろうに。マラウイ人の花への無関心ぶりに構わず、通りがかりに何度も写真を撮った。私にとってはそれほど見事だった。
南半球の桜
ジャカランダは「南半球の桜」とも称されるという。
マラウイの首都リロングウェでは紫のジャカランダの満開は9月中旬から10月初めにかけて。
【首都リロングウェ中心部のジャカランダ並木】
【ムチンジ県の農村部のジャカランダ】
つぼみ→花→葉という、葉より先に花が開くサイクルは桜と同じ。違いは、開花の持続期間が桜よりだいぶ長いこと。それから、桜は花がほぼ散り終わってから葉が出てくるが、ジャカランダは花が散りながら次々に時間差で咲くのか、10月に入って葉と残された花が混在しながらも、11月初めまで花を咲かせ続ける。
【リロングウェ教員養成大学教員住宅前のジャカランダ】
南半球の桜と本物の桜、違いは色々あれど、どちらも散り際は潔い。桜同様に花の最盛期を過ぎると一斉にその花を散らせる。
ジャカランダが花を一斉に散らせる瞬間に出会ったことがある。その様子は桜とはずいぶん違うものだった。桜が「ひらひら」なら、ジャカランダは「ぽたぽた」。花弁が重いから、ほぼ真下に落下するのだ。多少の風が吹いても落ちた花弁は簡単には飛ばされないため、木の下には淡い紫色の絨毯が現れる。本当に美しく、しばらくそのままにしておいてほしいほどなのだが、そんなこちらの勝手な希望はいざ知らず、マラウイ人の用務員はすぐに掃いて集めてしまう。絨毯の見頃も「一瞬」なのだ。きれい好き、掃き掃除好きだから受け入れるしかない。
並木道で紫と赤が同時に
「ジャカランダとホウオウボク、2種類の花が同時に見られるか」と聞かれたら、答えに迷う。2つの花が満開になる時期が、1か月半近くもずれているからだ。
ジャカランダが半分以上散って見頃を過ぎた後に、赤のホウオウボクが咲き始め、満開を迎える。だから、2つの花が同時にきれいに見られるのは、遅咲きのジャカランダと早咲きのホウオウボクが出会う11月初めのほんの短い期間だけ。
私は1年9か月滞在したので、2度だけその重なりを目にするチャンスに恵まれた。ただ本当に毎年必ず、2種類の花木が開花時期を重ねてくれているのかどうかは、分からない。
ホウオウボクも花を散らせた後には、赤い絨毯ができあがる。ジャカランダの淡い紫色と違って、赤一面の光景を見て私はおどろおどろしく感じた。色に対する感覚は人によっても国によっても大きく違うのだろうが、マラウイの人たちはこの赤を見てどんな風に思っていたのだろうか。
無関心なようでいて実はお花が好き⁉
この他にも大学構内にはオウコチョウ(黄胡蝶)があったり、紫色の花を咲かせる大花木があったりした。
この紫色の花木はてっきりジャカランダだと思い込んでいたが、帰国後に写真を見返して、葉の形が全く異なる別の木だということに気付いた。Google lensで覗いてみても、名は分からず。ジャカランダよりも密に薄紫色の絨毯を作り上げていた。これも用務員があっさり掃き集め、花壇の苗木の保湿用に土の上にまいていた。水が貴重なマラウイで、先人から引き継がれた知恵なのだろう。
附属小学校の校門前には大きなプルメリアが盛大に花をさかせたり、
附属小の中庭の中心にジャカランダが植わっていたり、
附属小の教員住宅の庭にポインセチアが巨大に成長したのが咲いていたり、
電気や水道が通っていない貧しい農村でも民家前にブーゲンビリアが咲き誇ったりしていたのを見たことがある。
花を咲かせる木を学校や庭に植える習慣は日本と同じだなと思った。
【サリマ県の小学校の青空教室】
マラウイには日本のようなお花見文化はないし、わざわざ足を止めて見入るようなこともしないけれど、無関心なようでいて実は相当お花が好きなのかもしれない。
【サリマ県中心部の街角】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?