読書録: 『データ視覚化のデザイン』
データを分析し可視化する技術を磨けたらな~という気持ちで本書を手に取った。データの「可視化」について、わかりやすくまとめた本。あらかじめ「どうやってデータをわかりやすく表示できるだろうか?」という問題意識をもって読めば得られるものがあると思う。一方で、「データ分析の力を身に着けたい!」という気持ちで読むと、不満足に終わるだろう。本書には技術的なことは特に書かれておらず、「ツールの存在を本書で知ったら、後は自分の職場に応用してね!応用の方法は自分で考えて!」という感じだからだ(筆者はそれで全く問題ないと思っているのだが)。データ分析担当者で、自分が持つ視覚化のレパートリーを増やしたい人にはオススメだが、データ分析を学んでみたい人・分析技術を磨きたい人にとっては、期待値から外れてしまうだろう
データ分析に携わっているとしばしば、本来の目的を忘れ「データから読み取れることを全部表そう!」という気になりがちだが、それでは全く意味がない。「仮説思考」という言葉に代表されるような、「設定された問」を忘れないこと―そもそも、問を事前に設定すること―が重要だろう。
少し実務的な話になるが、例えば、ある程度データを触った段階で、成果物となる”レポート”を一度作ってみてはいかがだろうか。こんなメッセージを、こういう流れで伝えたい、という”仮説”ができれば、あとはそれに沿ってデータを拾っていくだけだ。その際、「どうすれば伝えたいことをより鮮明に伝えられるのか?」という問いに、本書は強力に答えてくれるだろう。
繰り返すが、「視覚化する手段を学ぶ」本としては良いが、「データ分析を学ぶ」本ではない。その意味で、帯の”Python使いは10年生き残れる”というコピーは、そのミスマッチを助長させている気がしてならない。ただ、「データってこういう風に可視化できるんだ!」ということを学べた点で、勉強になった。
一つ注文を付けるなら、「実例をもとに」するなら、ただ成果物のtipsを並べるだけではなく、「どういう依頼がきて」「どういうローデータがあって」「それをどう可視化したのか」「その際にどういう思考フローで、そのフォーマットでの可視化に至ったのか」を、数例でいいからまとめて示してほしかった。それがあれば、読者が自分の現場に応用する際の想像力を助けることができただろう。
【おすすめ度】
★★★☆☆
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