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専攻医の自己学習(Josler引用文献探し)

皆様ごきげんよう。
本日は私なりの内科(分野は問わない)の自己学習で何をしているかをご紹介します。
前景疑問(目の前の患者さんのマネジメントに関する)を解決するというよりは、様々な疾患に関する知識を増やすためのものです。

私は知識のアップデートを行うために、いわゆるnarrative reviewによく目を通しています。
日本語で言う総説論文というやつです。

ある疾患などのテーマが定まっており、その疾患概念や疫学、スクリーニング、確定診断、治療などについて記載している最新の教科書のようなイメージです。

Narrative reviewの探し方

私は毎週木曜日にまとめて時間をとって4大医学雑誌(+α)のパトロールをします。
4大医学雑誌とは以下の4ジャーナルのことです。

  • New England Journal of Medicine (以下NEJM)

  • THE LANCET (以下Lancet)

  • Journal of the American Medical Association (以下JAMA)

  • British Medical Journal (以下BMJ)

NEJMやLancetは特に有名です。
NEJMは毎週木曜日に更新されるため、私のパトロールは毎週木曜日に行なっています。
パトロールする時には、narrative reviewの更新がないか、あった場合はテーマを確認して、流し読みします。必要に応じて精読します。
NEJMのnarrative reviewは"Review Article"あるいは"Clinical Practice"というジャンルに分類されています。
それ以外に、原著論文(Original article)はタイトルだけ見て自分の興味があるものや自分の専攻科に関するものはアブストラクトを読んで、より内容に興味を持った場合は細かく読みます。
英語が苦手?Google chromeでブラウジングしたらある程度の精度で和訳してくれます。

同様の作業をLancet、JAMA、BMJでも行います。
Lancetのnarrative reviewはSeminarという名称で発行されています。Lancetの姉妹誌(The Lancet Infectious Diseasesなど)でもOriginal articleやSeminarは更新されています。
Lancetは有料会員にならなくても、ClinicalKeyの使用権を持っていたらLancetとその姉妹誌の記事を閲覧できます。もちろん、ClinicalKeyもGoogle chromeでブラウジングしていたら和訳できます。

慣れてきて、どこにnarrative reviewがあるか分かってしまえば、数分で4大雑誌のnarrative reviewはチェックできるようになります。

他にオススメのnarrative reviewの出所としては、

  • American Family Physician (AFP)

  • American Journal of Kidney Diseases (AJKD) Narrative reviewは"Core Curriculum in Nephrology"という名称がついています。

  • American College of Physician (ACP) Narrative reviewは"In the Clinic"という名称がついています。

AFPはLancet同様、会員でなくてもClinicalKeyで閲覧できます。
総合診療医(というか家庭医)向けに書かれているので、内容は易しいながらにアップデートされており、個人的には大変勉強になります。

AJKDのCore Curriculumは電解質異常や尿路感染症といった内科であれば何科であってもマネジメント能力が要求されるcommon diseaseに関する記事が多いので、一読の価値があります。Core Curriculumの更新頻度は高くはなく、毎年いくつかのテーマで記事が出ます。

ACPは米国内科学会員あるいは、所属施設で契約していたら閲覧できます。私の所属大学は契約しているので閲覧できますが、初期研修病院では契約していませんでした。会員でなくてもタイトルとアブストラクトだけは読めたので、研修医の時に読みたいIn the Clinicがあった時には米国内科学会員の同期や上級医におねだりしてもらっていました(小声)。

後は、自分の専門科のメジャーな雑誌をたまにパトロールしています。

活用方法


内科専攻医としてNarrative reviewの価値は勉強になるだけではありません。
Joslerの病歴要約で考察を書く上で強い味方になります。

病歴要約における文献の記載について
⚫ 文献はEBMを重視の上、症例に適した原著論文、ガイドライン、レビューなどを引用し、 必ず文中に記載する。(全国の図書館で閲覧できるような公的機関の医学雑誌ない しは学術図書に掲載されたものからの引用に限る)
引用形式:
(Abe S. JAMA 1997;278:485)
(工藤翔二. 日内会誌 2006;95:564)
⚫ Web媒体から引用する場合、「Up To Date」等、医療情報源や各学会、厚生科学研 究班等から出されたガイドライン等、出典がオーソライズされたものとする。 引用形式: (●●学会編:●●ガイドライン.●●学会 HP)

https://www.naika.or.jp/wp-content/uploads/2023/10/2e5a70e7ec35fd38bfba84276602ddd2.pdf

ここに記載がある通り、レビューは引用文献に認められています。
指導医が厳しくて「原著論文しか認めない」という場合でも、Narrative reviewの引用文献を孫引きすれば良いだけです。

私が病歴要約で引用文献を探すときのルーチンは、
主病名のレビューを探す→症例に合う考察ポイントがレビューに書いていないか(治療選択など)確認する→該当箇所の元文献を確認する
という手順です。
自分で内容をスクリーニングしなくても良いので非常に楽です。

私はレビューを見つけたら、notionで文献管理しています。
大学のメールアドレスを持っている場合は学割プランで、ファイルアップロード5MBまでの制限もなくなっているので、大変お得です。私は初期研修医の時代からnotionを愛用していますが、大学に入職した瞬間に学割プランに切り替えました。
あくまで一例ですが、私はnotionでNarrative reviewは以下の画像のように管理しています。
※権利の問題があるという指摘があればこの画像は削除します。

Notionでの文献管理の一例

左から順に、
タイトル、pdfデータ(植え込み)、分野、雑誌、出版年、内容を一言で、リンク
としています。空欄の2つはdoiやpmidを入力していましたが、面倒でやめました。
リンクを貼っているのは、読みたい時にGoogle Chromeですぐ開いて和訳して読むためです。

これであれば、見つけたときにすぐ全部読まなくても、とりあえずストックしておいて必要な時に読むという手法が取りやすいです。
そして後輩に資料を渡す機会がある時にはレビューを渡しておけばそれっぽく立ち振る舞えます(小声)。

Narrative reviewを読むのがめんどくさい!

知りたい内容だけ知りたい、そもそも知りたい内容が書いてあるかわからない状態で読むのがめんどくさい。
そんな感情を持つ気持ちはとても良くわかります。
そんな時にはNotebook LMを活用しましょう。
2024年9月時点では無料で使える、AIによる情報整理ツールです。Chat GPTと違って、記載がない情報についてはハルシネーションを起こさずに「記載がない」と返答する上に、必要箇所の要点を綺麗にまとめてくれます。
私は初めてNotebook LMを利用したときは、あまりの賢さに衝撃を受けました。
気が向いたらNotebook LMを含めた有用なAIツールについても記事を書きましょうかね。

おわり

今回は私なりの自己学習方法、つまりNarrative reviewを活用する方法をご紹介しました。
皆さんのオススメのNarrative reviewや雑誌、勉強方法があれば是非教えてください!


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