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だから言っただろう (服の力#2)
用事があったので家を出た。白いスモックのシャツを着て出た。自分に似合う服があると、出かける時に何を着るかで迷わなくていいので助かる。どこかの家庭では出かけに、服の事で奥さんと揉めるお宅もあると聞く。
目的の場所に着いてドアを開けて中に入った。白いシャツを着た人が二人いて目についた。着ている白いシャツはとても上品でカッコ良かった。失礼とは思ったが勇気を出して、「カッコいいシャツですね」とその方達に声をかけさせてもらった。靴作家さんだという。白いシャツも友人のシャツデザイナーさんに自分用にあつらえてもらったのだという。
すると今度は靴作家さん達が「あなたがこのお店のドアを開けた時に、シャツがとても似合っている人が入ってきたと思った。」と言うのだ。さらにお二人共それぞれに「陶芸家さんか、写真家さんですか」「何か創作活動をされているのですか、芸術家さんですか」と僕に尋ねてきた。僕はそんな事は今まで言われたことがなかったので驚いてしまった。
僕は腎臓に疾患があって腎臓移植している。今まで僕の服選びといえば、「暖かいかどうか」だった。腎臓が悪いと、とても冷えたのだ。冬はもちろん、春になりゴールデンウィークになってもフリースジャケットを着ていたぐらいだった。服がカッコいいとか自分に似合うとかいうのは二の次だった。靴作家さん達には、そう正直に話した。
後日、シャツを購入したお店で社長さんに「このシャツを着ていたら、芸術家に見間違えられた」という話をした。社長さんは「だから似合ってるって、言っただろう」と自慢げに大きな声で言った。「人には似合う服があるのだ。似合う服を着ると、その人は力が出る。」「でもどの服が似合うかはkiyoくんは全く分かってないのだ。」と続けて話してくれた。
僕は褒められているのか、けなされているのかどちらかわからなかった。少しムッとしながら「まぁ、いいか」と思い直して、芸術家にでもなろうかと独りでニヤついた。