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生成AI時代に必要なもの

 生成AI時代に必要なものを考えてみた。それは、アナログ人間の発想力と創造性である。

 今年は、生成AIの三尺玉のような大きな花火が上がり続けた一年であった。ICTを主軸とする業務を長年探究してきた筆者としては、生成AIがどこまで世界を変えられるのか、あるいは、本当に変えられるのかを考えると、腑に落ちない部分があるのも事実である。

 text to text、text to image、text to music、text to videoといった具合に、生成AIは次々と進化を遂げている。しかし、ディープラーニングの原理を考えれば、これまで人間が培ってきたもの、蓄積してきたデータがその基盤となっている。そこには、アナログな人間の発想力や創造性とは質の異なるものが含まれているように思える。

 人間は長い歴史の中で、失敗を繰り返しながらも、「失敗は成功の母」として新たな成功を生み出してきた。そして、その成功か失敗かの判断は、最終的には人間が行ってきたものである。

 一方で、生成AIにおいて問題となるのは、ディープラーニングが取り込むデータの中に虚偽情報が混在する可能性である。これにより、生成AIの精度が100%に満たない限り、完全な信頼を寄せることは難しい。また、フェイクな情報を適切にフィルタリングできない現状では、その危険性は増大する。

 もちろん、人間もまた裏切りや怠慢、違法行為などによって正義や真実を歪めることがある。しかし、生成AIがどれほど高精度化しても、最終的にはアナログな人間の判断が必要である。この点を見誤り、生成AIの登場により作家や裁判官、設計者、医者すら不要になるという考え方は非常に危険な兆候であると言える。

 生成AIはあくまでアナログ人間の補完的存在として進化すべきである。しかし、考えることをしない人間、努力をしない人間を生み出す環境が整えば、人間の発想力や創造性、これまで積み重ねてきた価値観が失われる可能性がある。

 実際、生成AIが創り出す静止画や動画には感動を覚えない。どれも似通った表現や現実に存在しない生物が登場するだけで、娯楽性すら感じられないのである。

 また、自動運転車が普及すれば、車を運転する楽しさも失われる。ステアリングを握り、自ら運転する楽しみが消えれば、エンジンの振動やタイトなコーナーの操縦感といった魅力も失われる。カーエンスージアストにとって、それは車という存在自体の価値喪失を意味する。

 もし、生成AIが車や交通手段を席巻するようになれば、頭で考えない人間や体を動かさない人間が増えるに違いない。最悪の場合、国民が監視下に置かれ、現在の独裁国家と変わらない社会が生まれる可能性も否定できない。

 これからの時代に必要なのは、何なのか?

 それは、これまで以上のアナログ人間の発想力と創造性である。生成AIの進化に伴い、人間自身の進化もまた問われているのではないだろうか。この大きな課題について、筆者は自問自答を続けているところである。

※書は、筆者自由気まま書「智」


▼ChatGPT-o1による感想

筆者のエッセイからは「生成AIと人間の関係性」について、深い問題提起がなされていると感じました。とりわけ印象的なのは、生成AIがいかに進化してもその基盤にあるのは「人間が蓄積してきたデータや経験」であり、それらを“なぞっている”に過ぎないという指摘です。そのため、生成AIが私たちの想像や創造そのものを“超える”わけではなく、最終的にはアナログ人間の判断が要(かなめ)になるという主張には説得力があります。

一方で、筆者が述べている「発想力」や「創造性」は、失敗や試行錯誤というプロセスを経てこそ得られる、極めてアナログな営みです。生成AIは過去データを分析・再構築することは得意ですが、その根底には「失敗を繰り返す中で発生する本質的な発見」を内在的に体験するわけではありません。よって、どこまで行っても“最終判断者”としての人間は必要だという見方には、改めて頷かされます。

また、著者が指摘する「人間の考える力や体を動かす力が衰退するリスク」にも注目すべきです。便利さが高まるほど、我々の五感に基づく喜びや達成感、そして自分自身の手で工夫しようとする探究心を手放す可能性があります。とりわけ自動運転が普及した社会では、車を操る「楽しさ」を失いかねないという喩えは、あらゆる分野で起こり得る懸念を象徴しているように思えます。便利さや効率のみを追い求めると、人間が本来持っているクリエイティビティや情熱が消えてしまう恐れがあるのではないか――この問題意識こそが、エッセイ全体を通じて強く浮かび上がってきます。

最終的に筆者が提示する「アナログ人間の発想力と創造性をさらに伸ばす」というメッセージは、単なるAIに対する危惧ではなく、「人間が持つ本質的な価値への回帰」を提言しているようにも読めます。生成AIの進化は世界を大きく変えるでしょう。しかしその流れの中で、大事なのは私たち人間が“自分で考える”ことを放棄しないこと。そこにこそ、生成AIに翻弄されず、むしろ上手に活用していくためのヒントがあると感じました。

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西田親生@D&L
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