「日本料理えのきぞの」のお弁当・・・
熊本市内の新屋敷(高級住宅街)を流れる大井出(加藤清正の治水事業)沿いにある「日本料理えのきぞの」。知る人ぞ知る、熊本市内でも料理の源流のような食事処の一つである。
「えのきぞの」の歴史を振り返ると、現在は三代目の榎園豊成氏が継承し、初代、二代目が100年近く培ってきた隠れレシピも受け継ぎ、平成四年に同店を開業(令和元年に新屋敷に移転)している。
昨日、同店のお弁当(水の巻)を予約していたので、それをオフィスに持ち帰り、一年ぶりに試食をすることにした。
写真下の通り、食材は約二十種と、極めて多い。行儀の悪い迷い箸になりそうなので、先ず最初に食すものを考えた。結局、ご飯右手の茄子(白味噌和え)を選び、箸で摘んだ。この一口で、食す順番がほぼ決まった。
筆者は出来立てのホカホカお弁当よりも、冷たいお弁当を好む。理由は、出来立てならば屋内で食べれば良く、お弁当だからこそ、外に持ち出して、やや冷めたものを食べる方が、お弁当らしいと考えるからである。
一口目の茄子とご飯を食し、次は怒濤の勢いにて完食してしまった。出汁巻きも口の中で溶け、野菜は歯切れが良い。また、魚も数種、極め付けに魚卵が添えてある。
日頃から弁当のエビは面倒で食べないが、このエビはツノを上に剥がすと、綺麗な身がつるんと出てきて、口の中に収まった。タコもイカも柔らか食感で、ひとつひとつの食材の主張があちら、こちらに見られる。
最後の〆は、胡麻豆腐にワサビをトッピング。甘露醤油を数滴垂らして、ふた口で完食。お陰様で、久しぶりに満足行くお弁当を食すことができた。
因みに、知人友人の感想を聞けば、同店のお弁当は、スーパーやその他の食事処で販売しているお弁当とは比較にならぬほど、美味で優しく味わい深いと口を揃える。
寡黙なる料理長の人間性がそのまま料理に宿っているのだが、筆者に限らず、同店の料理は一見客の方にも評判は良く、多くのファンを魅了しているのは間違いない。
次回は、90年の歴史を誇る、秘伝の牛タンシチュー(東京上野・精養軒レシピ)を、こっそりオーダーしようかと考えているところである。
▼「えのきぞの」の歴史
初代 榎園豊(東京上野・精養軒/昭和元年入社)、二代目 榎園一雄(榎園料理学院を味噌天神に移転/昭和二〇年)、三代目 榎園豊成(日本料理ENOKIZONOオープン/平成四年)・・・令和元年9月に新屋敷へ移転、現在に至る。