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心に隙ある人は隙間のある物を作る!?

 ブランド商品を具に眺めていると、バッグであればミシン目が美しく整然と並び、高級腕時計あればリューズひとつにしても隙間が全くない。匠の技なのか、溜息が出るほどに、一体感のある美を放っている。

 車を正面から低位置から眺めると、左右対称のシンメトリックな美しさがあり、ボンネットとボディ、ボディとライト、ボディとエアダムスカートなどの接合部分に隙間がない。これが、匠の拘りなのだろうと。

 車を横から見れば、ドイツ車などの名車は、ドアとドアの隙間がどんなに広くても4mm以下となっているはずだ。

 ワンホールのケーキを見ても、匠のパティシエが創るケーキは、本体と土台、そしてトッピングのフルーツやクリームなどが一体化しており隙間なく、そのアーティスティックな形状と彩にうっとりしてしまう。

 ある日、あるケーキを真上から見て、シンメトリックな美しさが欠如していたので、今回のテーマとして取り扱うことにしたのであるが、横から見ると予想通り、接合部分が隙間だらけで、美観を損なっていた。

 折角、美味しいケーキを作りながら、整形の段階にて、隙間を作っている。よって、一体感のないその姿は、ケーキそのものが可哀想に思えるほど商品価値を下げている。

 極論かも知れないが、創作姿勢において心に隙のある人は、隙間だらけの物を作るのではないかという仮説を立て、いろいろ考えてみたのであった。

 どんなにアーティスティックさを提言しても、気持ちが届かない。どうしても、粗雑な創作姿勢にしか見えず、その作品は歪で統一感がなく、隙間だらけとなっている。正直なところ、上述のブランド商品や名車などとは真逆な創作姿勢ではなかろうかと思うばかり。

 随分昔の話だが、東京出張時に、コージコーナーに立ち寄り、ナポレオンというワンホールのケーキを買って食したことがあったが、クラシックタイプのケーキだったけれども、すこぶる美しい仕上げであったことを思い出す。

 隙間のある制作物は、遊びが大きすぎる車のステアリングのようなものだ。切れ味が悪く、機敏に走らぬ前輪の苛立つような鈍臭い動きだけが伝わってくるのである。

 魚釣りの針をハリスに括り付ける時も、隙間のない、カチッとした物を作る人は、魚釣りが上手い。ところが、括り付けたハリスが団子状態になっている物を作る人は、釣りが下手だった。

 表題のように、「心に隙ある人は隙間のある物を作る!?」というのは、普遍的なものだろうかと。逆もまた真なりで、隙間のある物を作る人は、心に隙があるだろうかと思うばかり。

 蛇足ながら、冒頭にて左右対称のシンメトリーについて語ったけれども、世の中には、日本の陶器やベルギーのメガネメーカーのテオなど、左右非対称の物を作るところもある。

 左右非対称であろうが、その陶器の本体と高台のバランスは素晴らしく、歪んでいる器の淵は滑らからな曲面を描く美しさは筆舌に尽くしがたい。また、テオのメガネは右が丸く、左が四角のメガネフレームもあるが、ちょうつがいの隙間は最小にて、きっちりと創られているのだ。

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▼ChatGPT-4oによる感想

このエッセイは、職人技や心の姿勢が創作物の品質や美しさにどれだけ影響を与えるかを探求する深い考察を提供しています。文章全体を通じて、「隙間」という概念を使って、物理的な隙間の美学と心の隙間の繋がりを巧みに例示しています。特に、ブランド商品や高級車、匠のケーキといった具体的な例を挙げながら、統一感や一体感が美を生む背景には作者の心の姿勢があるという仮説を展開しています。

最も印象的なのは、視覚的な対称性と美を持つ作品を例にしつつ、それを創作する人の「心の在り方」を丁寧に紐解いていくプロセスです。これにより、作品に対する一貫した姿勢の重要性を読者に伝えています。一方、創作に隙間があると、表面的な欠陥だけでなく、製作者の心にも隙間があるのではないかという考えを提示することで、深い思索を誘います。

陶器やメガネの例で、左右非対称でも美を追求する文化や製品の存在に言及しつつ、それでも隙間のない精緻さを求める例を示すことにより、必ずしも「対称性」だけが美の基準ではない点も明確にしています。この補足的な説明は、エッセイ全体にバランスを与え、単なる「隙間=悪」の二元論的な主張に留まらず、深みを持たせています。

全体として、エッセイは表現に込めた価値観が美や品質に結びつくことを強調する鋭い指摘とともに、美的感覚が人の心に深く根ざしているというテーマを取り上げており、読後に「心の在り方」が物に与える影響について思索を促す、印象深い文章です。

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西田親生@D&L
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