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燕雀知らず天地の高さ

 「燕雀知らず天地の高さ」とは、平たく言えば「井の中の蛙大海を知らず」ということである。

 元首相の池田勇人と佐藤栄作が対峙していた時に、吉田茂が田中角栄をメッセンジャーとして、佐藤栄作へ送った文言が「燕雀知らず天地の高さ」である。対して、池田勇人へは「呑舟の魚は枝流れに游がず」と送り、二人の諍いを鎮めたという。

 今回も自戒を込めての話だが、とにかく周囲には「燕雀知らず天地の高さ」であり、ローカルスタンダードをこよなく愛する人が多い。何を語っても、「そんなことは関係ないし」で遮断されてしまう。

 ホテルのホテルとして君臨している、旧御三家の一つ「帝国ホテル」の歴史と伝統を紐解くと、そっぽを向く人もいる。いやいや、日本近代史を読み解くのに、「帝国ホテル」の存在は想定外に大きく、価値あるものである。

 当時からカルチャー発信基地としての「帝国ホテル」による影響は、当時より、全国のホテルや宿に影響を及ぼしてきたはずだ。また、我々の家庭に西洋料理が浸透しているのも、「帝国ホテル」の元総料理長である村上信夫氏の功労でもある。

 NHK料理番組に出演していた同氏が、いとも簡単に、フォークだけを使ってオムレツを作るところなど、当時の主婦層に多大なる影響を与え、西洋料理が日本国内津々浦々に浸透していったのである。

 このようにカルチャー発信基地の「帝国ホテル」の歴史や伝統を綴る書籍を読むと、一気に日本近代史・現代史が読み取れるほどに価値あるものなのだが、それを地方の田舎で語ると「要らぬ世話」のような顔をする人も少なからず。

 そのような人がローカルスタンダードを粘り腰にて継承し、善きも悪しきも、ごった煮状態にて現在に至っているケースが後を絶たない。だから、「燕雀知らず天地の高さ」と揶揄されるのである。

 かといって、ローカルスタンダードを全面的に否定するものではない。善いものは善い、悪いものは悪いと、取捨選択して、善いものを継承していけば、何も問題はないはずだ。

 変化を好まぬ、ローカルスタンダードにどっぷり浸かった人ほど、粘り腰である。万が一、変化がこれまでの既得権益領域に悪影響を及ぼすのではないかという危機感も無きにしも非ず。それを考えると、苦笑するに値する。

 何はともあれ、カルチャーショックを受けるものは、我々の周囲に無数に存在していることを考えれば、少しでも素晴らしいカルチャーを吸収する姿勢は重要ではなかろうかと考える次第。


▼ChatGPT-4oによる感想

このコラムは、日本の社会や文化におけるローカルスタンダードの影響と、その視野の狭さについて鋭く指摘している。特に、「燕雀知らず天地の高さ」という言葉を起点に、帝国ホテルを例に挙げながら、日本の近代史や西洋文化の受容について語る視点は非常に興味深い。

1. 歴史と文化の価値

帝国ホテルの歴史や村上信夫氏の功績を通じて、日本の文化や食生活がどのように変化してきたかを述べる点は、説得力がある。村上氏がフォーク一本でオムレツを作る姿が主婦層に影響を与えたエピソードは、文化の広がり方を象徴しており、単なるホテルの話ではなく、日本全体の近代化にも関わる重要な要素として描かれている。

2. ローカルスタンダードへの批判と共存

地方におけるローカルスタンダードの根強さに対する批判は痛烈でありながら、一方で「全面的に否定するものではない」というバランス感覚も持っている点が印象的だ。すべてを否定するのではなく、取捨選択しながら「善いものを継承する」姿勢を求めている点に、筆者の冷静な視点が感じられる。

3. 変化を拒む姿勢への皮肉

変化を好まぬ人々への指摘も的確であり、特に「既得権益を守るために変化を拒む」という分析は、地方に限らず、日本社会全体に当てはまる問題だろう。単なる頑固さではなく、経済的・社会的な利害関係も絡んでいるため、一筋縄ではいかない現状を示唆している点が興味深い。

4. カルチャーショックを受け入れる姿勢

コラムの最後で、「素晴らしいカルチャーを吸収する姿勢の重要性」を説いている点は、筆者の主張を総括するものとなっている。どんなに変化を嫌おうと、世界は絶えず動いており、文化も進化していく。その中で、少しでも新しいものを受け入れ、視野を広げる努力をすることの大切さを訴えている。

総評

このコラムは、視野の狭さや変化を拒む姿勢を皮肉りながらも、一方で歴史や文化の価値を尊重し、取捨選択の重要性を説くバランスの取れた内容になっている。帝国ホテルの歴史を通じて、日本社会全体の姿勢を浮き彫りにしつつ、読者に対して「あなたはどうする?」と問いかけるような含みを持たせている点が印象的だった。

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西田親生@D&L
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