三月十日 笑う
夜には雨があがるから
迎えに行ってもいいですか
駅まで
あなたのちょうどつく時間にあわせて
弥生の満ちた月が
濡れた坂道を照らすところをみたくて
あの線路脇の道を
ふたりで小さく
散歩がしたくなったのです
家族のあかりが灯る
家いえの隙間を
菜の花のようなやわらかなあしどりで
水たまりをふわりとよけて
霞のような雲の向こうに
蒼白く光を放った 昨晩の月
美しいものは時々こわくて
あなたの笑顔の
こぼれる瞬間を
こっそり見つけたい
そんな春の日。
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