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「いいデザイン」を生むプロセス

国際的なデザイン賞であるiFデザインアワード2018を受賞している『まごチャンネル』。シンプルでありながら温かいデザインが特徴ですが、どのように現在のカタチにたどり着いたのでしょうか。今回はデザインを決める過程で大切にしていることについて、代表の梶原が語りました。

まごチャンネルとは>
スマホで撮った子どもの動画と写真を、実家のテレビで臨場感たっぷりに楽しめるサービス。実家ではWi-Fi不要、ケーブル2本を差し込むだけで簡単に設置が可能。

家族で過ごした「温かい時間」を想起させるデザイン


ーーもともと、iFデザインアワードの受賞を念頭に開発していたのでしょうか?

そうですね。プロダクトデザイナーの石井聖己さんとお会いした2013年の冬から、この賞を目指していました。約2年という歳月をかけて作ったものが一定の評価を得ることができ、ホッとしました。

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ーー最初はどんなデザイン構想だったのでしょうか?

装置を2本のケーブルでつなぐことや、TVの横に置くこと以外は、何も決まっていませんでした。ただ表現したいことは明確で。

家族でワイワイ過ごした時間がカラフルな時間だとすると、子どもが巣立った後は夫婦のみで落ち着いたモノクロの時間になる。なので、「夫婦にカラフルだった時間を想起してもらえるような、温かい時間が戻ってきたことを伝えられるデザインにしたい」と思っていました。

試作は70体以上。デザインの「理由」を問う必要性


ーーどのような制作過程を経て、『まごチャンネル』は現在の形になったのですか?

一番最初は家のカタチではなく、陶器でできた縦長のデュフューザーのようなカタチでしたね。そこから石井さんがいろいろなデザイン案を出してくれて、70体ほどの試作を経て現在のカタチにたどり着きました。

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▲初期に制作していた、アンテナの形を意識したデザイン

僕が「なぜこのカタチにしたのですか?」とデザインの理由を聞いて、石井さんが僕の発言をどのように解釈し、こういうカタチにしたのかを話す。そして、解釈や方向性のズレがあればその時点で軌道修正していく。こうしたディスカッションを何度も繰り返しながら進めていきました。

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▲試作段階ではいくつものデザイン案がありました

ーーデザインの「理由」を大切にしているのですね。

そうですね。「なぜこのカタチなのか?」「この色なのか?」ということにはできるだけこだわりたいと思っています。『まごチャンネル』は高齢者が使うものなので、ストレスなく自然に使ってほしいという思いや、そのために減らせるものは徹底して減らしたいという考えもありました。

より良いものをギリギリまで追求するから、いいデザインが生まれる


ーーデザインが果たす役割って何ですか?

課題解決ですね。いろんな選択肢を議論する中で「これがベストだよね」と話しながら解決に向かっていけたらすごくいいなと思います。

実は『まごチャンネル』は家のカタチにたどり着いたとき、窓が光るのはなく、半分開いたドアから光が漏れるデザインでした。その時点で、温かい時間を想起させるコンセプトが表現されていてすごくいいと思ったんです。でも「家の中の温かさが伝わる表現って他にもあるのでは?」と石井さんと模索した結果、窓に明かりが灯る表現に落ち着きました。

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ーー最後までより良いものを追求し続けた結果、このデザインに行き着いたのですね。

「もっといいものがないか?」と常に探し続ける姿勢はとても大事だと思います。

僕がこれまで一緒に仕事をしてきた“超一流”と呼ばれるような人は、評価軸が他人ではなく、自分の中にある人たちばかりでした。もちろん人から評価されることも大切ですが、より良いものを作れたかどうかは自分でわかるはずです。仕事として人から期待される水準は満たした上で、自分自身に誇れることを目指せる人はいいですね。

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石井さんは自分の中にこだわりがあって、家の形に決まってからも煙突のカーブする角度を変えたり、家の縦長のバランスを探ったりして、自分にとってのゴールを探し続けていました。

ーーなぜそのような考えを持つようになったのでしょうか?

前職であるApple Japanでは一度決まったことでも、後になってひっくり返ることがよくありました。多くの企業では、サービス名は一度決まったら、変わらないのが普通だと思います。でもAppleは「もっといいものはできないか?」とギリギリまで追求するカルチャーがありました。そういう考え方ができる人は、いいものを作れる人だと思いますね。

メンバーに求めるのは「自分の仕事に誇りを持ちたい」という価値観


ーーどんな方と一緒に働きたいですか?

家族や大切な人に自分の仕事を誇れることを重視している人がいいですね。あとはチカクの掲げる3つのバリュー(行動規範)に共感できるかどうかが大事だと思います。

「Magic to Customers 」(すべては顧客のために)
お客様をどこまで満足させられるかをひたすら考え続けること。魔法みたいに顧客の期待値を超えて、「おおっ!」と思わず声が出てしまうような体験を作ることにこだわることです。
「Great Team Player 」(最高のチームプレイヤーであれ)
仕事にコミットし、約束した成果を出しつつ、チームとしての成果が最大になるように動くことです。
「Focus Focus Focus」 (集中することに集中する)
大きなことを成し遂げるためには、細切れに多くのことをやっていては突き抜けられません。何が一番大事なのかを見極めて、それ以外のことはやらないという思い切りが必要です。

ーー現在募集中のデザイナーの仕事内容を教えてください。

『まごチャンネル』のユーザー体験設計と、そこから見えてくる課題をデザインの力で解決する仕事をしてほしいと思っています。iOS/Androidアプリ画面やテレビ画面のUI/UXデザインをはじめ、キャンペーンや企画ごとに必要となるデザイン(Web、チラシ、パッケージ、仕様書など)のディレクションなど、業務範囲は多岐にわたります。

先ずはアプリやWebの経験があれば、そこから自分の領域を広げていくこともできます。デザインに理解のある会社で、「いいデザイン」を生み出したい方に興味をもってもらえると嬉しいです。

チカクでは、一緒に働くデザイナーを募集しています。興味をお持ちの方は、こちらからご応募いただけると嬉しいです。


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