『dele』の心意気

演出の美しさと巧妙さにとりこになっていた金曜ナイトドラマ『dele』。何より、W主人公の二人がとても魅力的で、すっかりやられてしまった(現在ロス中)

物語としては、死後のデータ処理会社が舞台で、坂上圭司とアルバイト(?)の真柴祐太郎が、依頼人の死亡確認をし、親族たちにばれないようにデータを削除する、といった、まぁいわゆる“探偵事務所的”な構成スタイルだ。

しかし斬新なのは、そのふたりのキャラクターで、その相反する特性をうまく用いて、世の中の「光と影の曖昧さ」を丁寧に描いた。

祐太郎は、軽い。それは、軽薄、という意味ではなく、“やわからく、やさしい”。

一方、坂上圭司(山田孝之)は重い。“厳しく、強い”。

祐太郎は、いじめがテーマの回で、人の持つダークな部分を『汚いんじゃない、弱いだけ』と言った。彼は、人をやさしい気持ちにさせる才能がある。でもそんなやさしい彼には、ともだちが一人もいない。なにも持たない祐太郎。ぽっかりと空いた穴から放つ、とびきり無垢なやさしい笑顔。その空虚さがたまらなく切ない。

一方、圭は、どんな時も正論だ。人が言われたくない事実をつきつけて、逃げ場をなくす。一見とっつきにくい圭だが、その厳しさは、屋上から飛び降りようとしていた女の子を救った。彼女の気持ちを変えさせたは、やさしい祐太郎ではなく、圭だった。

『dele』は真逆の主人公ふたりが、なにが正しいのかわからない現世で、少し違ったカメラワークで、ものごとを照す。それは新聞とかテレビニュースでは語られない。毎回、「あなたはどう思う?」と、問われているようだった。とても有意義な時間だった。

そして、これは当然憶測でしかないんだけれど、たまに、物語の構成的に「ここ、いらないんじゃないか」っていう違和感生じたシーンがあった。でも、あとから考えると、人としてものすごい大事な言葉が込められていて、「これをどうしても言いたい」っていう作り手の意地のようなものがそこにあるんじゃないかって、勝手に感じていた。

あの夏休み最後の日に放送された、屋上のシーンしかり。

あなたはどうする?俺らはこうするけど。そう、言われているみたいな。

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